はじめに

米ドル高・円安の主役は?

図表1を改めて見ると、2月以降大きく米ドル高・円安に戻した動きは、日本の金利とは無関係、その意味では日銀の金融政策とも基本的には関係ない動きの可能性が高いと言えるでしょう。では、なぜ米ドル高・円安に戻すところとなったのか、その答えは図表2を見るとよく分かります。

これは、米ドル/円に米国の金利(2年債利回り)を重ねたものですが、両者はとてもきれいに重なり合ってきたことが見て取れます。つまり、円金利とほとんど無関係に起こった米ドル高・円安の動きは、米金利上昇に連れた結果だったと言えるでしょう。

「それにしても、ここまで米金利が上がるとは思っていなかった。その意味では、予想以上の米金利上昇で、予想以上に米ドル高・円安へ戻すところとなったわけですね」

そう考える方がいたら、それは間違いというほどではなさそうですが、「予想以上の米金利上昇」という部分は、少し紐解いてみたいところですね。

先ほどの図表2で米ドル/円に重ねた2年債利回りという金利は、基本的に金融政策を反映して動く金利です。米国の金融政策を行う中央銀行はFRB(米連邦準備制度理事会)ですが、そのFRBが決める政策金利はFFレート。そこで、米2年債利回りとFFレートを重ねたのが図表3ですが、両者は基本的に連動していることが分かるでしょう。その上で、青色のグラフで表示した米2年債利回りがオレンジ色のグラフで表示したFFレートに対して先行する関係となっています。

米2年債利回りは基本的に政策変更を先取りして動くので、FFレートを引き上げる、つまり利上げの前には米2年債利回りが先に上昇し、利下げの場合はその逆ということになります。

ところで、2022年末から2023年が始まる頃にかけて、米2年債利回りはFFレートを下回って低下しました。これまでの説明からすると、それはFFレートが引き下げられる、つまり利下げを先取りした動きと言えるでしょう。

ちなみにこの頃、FFレートを決めるFRBは、2023年中の利下げの可能性を否定していました。ところが、上述のように米2年債利回りは早期の利下げを先取りするように動いたわけですから、「FRBは間違う」と言っているようなものでした。

ところが、とくに2月以降発表された1月の米経済データは予想より強い結果が続き、FRBが言っていたように2023年中は利下げを行わない可能性が高まり、それどころかFRBが想定していた以上に利上げを行う必要も注目され始めました。

どうやらここまでのところで「間違っていた」のは、FRBではなく金利市場の可能性が高くなりました。この結果、米金利は下がり過ぎた分の反動も後押しする形で大きく上昇し、それこそが2月以降の大きな米ドル高・円安へ戻す動きを演出したということになるのではないでしょうか。

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