はじめに

インボイス制度スタートで誰が困る?

ところが、喜んでばかりもいられません。フリーランスとして活動している、消費税を納めるほどではない小規模な事業主の方からすれば、大手の取引先から「おたくはインボイス発行してくれますの? しれくれるんでっしゃろな?」と、圧力をかけられる可能性もあります。そして、国税庁のインボイス制度の注意書きには「売手であるインボイス発行事業者は、買手である取引相手(課税事業者)から求められたときは、インボイスを交付しなければなりません」と記載があります。

「インボイスを発行しない免税事業者」であることを理由に、取引を急に打ち切られたら、たまったものではありません。そんな時は、2つの対応策があります。

・あえて「課税事業者」になって消費税の申告や納付をスタートさせ、インボイスを発行する
・「消費税分は負けておきます」と今までより1割ほど安い金額で仕事を受ける

「課税事業者の選択」は、取引の金額が少額で消費税の計算をしなくてもよい事業者であっても、当人が希望すれば、消費税を申告して納付することができる制度です。余分に手続きが必要ですが、1割ほど売上を減らす必要はなく、正々堂々と10%の消費税を受け取って、消費税の申告と納付をすればいいのです。なお、売上高が年間5,000万円以下であれば、納付する消費税の金額をザックリした割合で計算できる「簡易課税」という制度があります。

インボイスをきっかけに「課税される事業者になります!」と手を挙げるのなら、それと同時に「簡単な計算方法で申告したいです!」というのも手を挙げておくと、業種によって売上の何割を経費として引くのかを決めてくれているので、消費税の計算は売上の方だけキッチリしておけばOKということになり、計算の手間がかなり省けます。

会社員が知っておくべきポイント

「フリーランスじゃないし、関係ないや」ですって? なんて……嘆かわしい!

仕事で仕入れや外注の発注をしたり、値段の交渉をしたりすること、ありませんか? 取引先がたまたま「免税事業者」で、そうと知らずに「10万円と消費税で……今回は11万円でお願いします!」なんてオーダーしてしまったら、さぁ大変! 会社の経理部では、11万円の請求書を受け取った後、「これって、インボイスじゃなくね?」となり、免税事業者に11万円を振り込んだものの、この1万円が預かった消費税から引けず、会社がこの免税事業者の懐に入った1万円を負担することになります。

取引先がインボイスを発行できる登録事業者かどうかを確認して、登録番号も事前に知らせていただけるとベストですね。

登録番号はチェックできる

登録番号は、インボイス発行の登録を受けたい事業者が、税務署に「登録申請書」を提出し、税務署で登録ができると事業者に通知されます。登録番号がもらえるまで申請から3週間から2ヵ月ほどかかるので、取引先から登録番号を要求されそうな事業者さんは早めに申請しましょう。

登録番号の構成は、「T(ローマ字) + 13桁の数字(事業者ごとの番号)」となっていますが、デタラメに作ることができないように、本当にインボイス発行事業者か確認できる検索サイトがあります。現在登録されている事業者は240万件ほどですが、申請書の提出を終えている事業者は270万件とのこと。

届出の締め切りが9月までに延びた

以前は、この登録申請が2023年3月31日まででなければいけないと言っていましたが、免税事業者が4月以降に取引先から「インボイスを発行してほしい」と言われた場合にも対応できるように、特別な場合はそれを過ぎても受け付けてくれることになりました。ただし、登録日からインボイスの発行ができるようになりますので、10月1日の制度スタートまでに登録が必要なら、逆算してその2ヵ月ほど前までには提出しておきたいですね。

特別ルールの追加

免税のままでもいいのに「課税事業者になる!」宣言をした方については、さらに特別ルールが登場しました。約3年間は、ちゃんと計算した消費税額じゃなくて、売上の消費税額 × 2割だけを納付すればOK!というものです。慣れないなか、納める必要のなかったものを納めようっていうんだから、初めのうちは少しでイイよということでしょうね。


会社で取引の金額に携わっている方にとっては、知っておいた方がいい話も多かったのではないでしょうか? 会社の経理部に経費の精算をお願いして「コレ、インボイスじゃありません!」と怒られないように、正しい知識でインボイスとも向き合っていてくださいね。

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