はじめに

「今回は違う」という楽観的な思い込みが金融危機を繰り返す

しかし、カーメン・M・ラインハートとケネス・S・ロゴフ著『国家は破綻する』によれば、危機に際してエコノミストたちは毎回、「今回は違う(This Time Is Different.)」と主張するのですが、違ったためしがないといいます。毎回、同じことの繰り返しだというのです。バブルとその崩壊、銀行危機、通貨危機、インフレ危機……。人類は幾度となく同じ危機を繰り返し経験してきました。なぜ同じ誤りを繰り返すのでしょうか。そこには常に、 「今回は違う」という楽観的な思い込みシンドロームがあったから それが、66か国を対象に、800年にも及ぶ長期のデータにもとづき、危機が繰り返し発生するメカニズムを分析した結果、辿り着いた結論です。世界的なベストセラーになった同書の原題が「This Time Is Different」です。

もうひとつ、過去の危機に共通するのは、ひとびとの「疑心暗鬼」という心理です。2008年に起きたグローバル金融危機は、リーマンブラザーズの野放図的な破綻がきっかけとなりました(それゆえ「リーマンショック」と呼ばれます)。そしてリーマン破綻の原因はサブプライムローンを複雑に証券化した金融商品が世界中にばらまかれ、それによって膨らんだ巨大なバブルの破裂でした。ただ、それらはあくまで「きっかけ」でしかありません。金融危機の本質は、金融機関が資金のやりとりをするレポ市場が機能不全に陥り、金融機関が資金を融通し合えなくなったことにあります。その背景には「何が潜んでいるか」「何が出てくるか」それらがまったく「わからない」という恐怖があり、そのせいで一気に流動性が枯渇してしまったのです。

今回のケースは特殊な事例であり、冷静に考えればこれ以上、問題がエスカレートしていく可能性は低いと思われます。しかし、上述した通り、リスクはわれわれの心理にあります。
「今回は違う」と過度に楽観にならないことが大切です。そしてひとびとの疑心暗鬼で金融危機は起こるのだということを常に意識しながら、慎重にマーケットを見ていくことが肝要な局面だと思います。

この記事の感想を教えてください。