はじめに
改善し、上場維持基準をクリアした企業例
ここで、市場再編が行われるまでは基準未達だった企業で、現在基準をクリアした例などを紹介します。
プライム市場の高千穂交易(2676)は、2021年12月の時点で流通株式時価総額が64.3億円と、基準の100億円に届いていない状況でした。同社は、時価総額向上に向けた取り組みとして2025年までの新中期経営計画をまとめ、注力する事業に人員をシフトし、最適な人員構成を図り、DXの推進などを掲げました。また、自己資本利益率(ROE)が3期平均8%を達成するまで配当性向100%を維持する、創業70周年記念配当15円を実施するなどの株主還元策を発表しました。
この発表後は決算も順調で配当も増配し、株価が堅調に推移しました。そうした事を受け、同社は2022年12月末時点で全ての項目でプライム市場の基準をクリアしました。
また、ゆうちょ銀行(7182)は、同社株の約9割を日本郵政が保有しており、クリア条件の流通株式比率が35%以上が未達となっており、経過措置の適用でプライム市場に上場していました。しかし、2023年3月に日本郵政がゆうちょ銀株約10億8,900万株を売り出す事で、日本郵政の保有比率は6割に下がり、基準に達する見通しでプライム基準をクリアできる見込みです。
現在、市場ではPBR 1.0 倍割れが注目されますが、東証のフォローアップ会議では、市場再編が上場会社の企業価値向上へ寄与することを目的としていることを踏まえるならば、 全上場会社の約半数がPBR 1.0 倍割れの状況にメスを入れない限り意味がないとしています。2022年に実施した市場再編が、無意味にならない対策を打ち出したようにも感じます。
海外市場と比較してもPBR1.0倍割れの企業が多い日本市場で、企業が株価を意識する姿勢に変化が出てくるのであれば、海外投資家が日本市場に資金を振り向ける可能性は十分にあると感じます。また、2024年からはNISAの枠も拡大される見込みです。そうした事を踏まえ、日本の上場企業の変化に期待したいところです。