はじめに

マッチング拠出の注意点

マッチング拠出の注意点は、掛金が企業拠出の額を上回れないという点です。例えば、会社からの掛金が10,000円であれば、それ以上のマッチング拠出はできません。もしそれ以上の掛金拠出を希望する場合、iDeCo併用が選択肢です。なぜならばiDeCoの場合、会社の掛金額にかかわらず20,000円までの掛金を拠出できるからです。

もし会社の掛金が20,000円であれば、マッチング拠出は20,000円まで拠出できます。会社の掛金が35,000円であれば、マッチング拠出の上限は35,000円ではなく20,000円が上限となります。なぜならば、DC以外の企業年金がない会社の場合、会社掛金とマッチング拠出の掛金合計の上限額は55,000円と定められているからです。

なお、DC以外の企業年金がある場合の会社掛金とマッチング拠出掛金合計の上限額は27,500円と定められています。掛金が昇給などで変わる会社の場合、それによりマッチング拠出の掛金の変更も必要になることがあります。

マッチング拠出のもう一つの注意点は転職時です。DCは会社の制度ですから、会社を辞める時は、そこにある資金をすべて出さなければなりません。60歳以降であれば、老齢給付金として受け取ることができますが、それ以前であれば手元に資金を引き出すことができず、どこか違う制度、具体的には次に勤める会社のDC、あるいはiDeCo、または企業年金連合会へ移換しなければなりません。いずれにしても、いったん資金をすべて現金化するので、投資を中断することになります。

iDeCo併用を選ぶポイントと注意点

2022年10月の制度改正により、DCに加入している方であっても、ご自身の希望によりiDeCoに併用加入できるようになりました。会社にDC以外の企業年金がない場合、iDeCoの掛金は上限20,000円かつ会社のDC掛金との合計が55,000円以内であること、会社にDC以外の企業年金がある場合、iDeCoの掛金は上限12,000円かつ会社のDC掛金との合計が27,500円以内であることが条件です。両者共にiDeCoの加入掛金下限は5,000円です。

DC加入者で会社にマッチング拠出がある場合は、それとの比較でiDeCo併用にメリットがあるかどうかを考えます。会社にマッチング拠出がない場合は、将来に向けた資産形成のためにiDeCo併用を考えます。

iDeCo併用の魅力は、DCと異なり加入者自身で運用商品を選べるという点です。例えば日本の株式に投資をするインデックスファンドの信託報酬は、0.143%、0.154%という投資信託がiDeCoでは多数採用されています。S&P 500あるいは先進国株式に投資をするインデックスファンドは、0.09680%または0.10230%という水準です。

一方DCの場合、ベンチマークが同じであっても信託報酬がそこまで低くない場合も多いです。信託報酬は安ければいいという単純な話ではありませんが、それでもインデックスファンドを選ぶのであれば、コストは意識したいところです。これまでDC加入者は、会社が選定する運用商品しか選択肢がありませんが、iDeCo併用ができるようになったことにより、運用商品の幅が広がった点は大きなメリットだと思います。

更にiDeCoには、人気のアクティブファンドが採用されているケースが多いです。アクティブファンドの選定は難しいといわれますが、長期運用に適していると金融庁がつみたてNISAに採用しているアクティブファンドが、iDeCoにも採用されていることが多いので参考になります。上記インデックスファンド同様、DCでは自分の好きなファンドに投資ができないことも多いのですが、iDeCoはもっと自分の意思で運用商品を選ぶことができます。

またiDeCoは個人の口座ですから、転職をしたとしても運用中の資産を売却し移換をするといった、運用の中断をする必要はありません。転職先については、運営管理機関に届ける必要がありますし、その会社の企業年金の状態によっては掛金上限額が変わることもありますが、運用商品を強制的に売却させられるということはあり得ません。投資の継続性はやはり大きなメリットと考えます。

これまでiDeCo併用の際に、個人で負担しなければならない手数料への注意喚起が行われていましたが、毎月の運営管理機関費用を0円と抑える金融機関も増えてきました。もちろん、国民年金基金連合会に対して負担する月々171円はどこの金融機関を選んでもかかりますし、iDeCoを始める際の2,829円の負担も相変わらずありますが、前述した中断されない長期資産形成メリットを考えると、iDeCo併用に魅力を見いだすという方も増えているのではないかと考えます。

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