はじめに

あらゆる商品やサービスに欠かせない名前。それを付ける行為(ネーミング)の目的は「商標としての名前を定める」という根本的なものだけではありません。

ネーミングには「名前を聞いただけで商品・サービスの具体的なイメージが思い浮かぶ」「聞いた人に強い印象を与え、記憶してもらう」という期待が込められています。なかには「宅急便(ヤマト運輸)」「ウォシュレット(TOTO)」のように、商品名・サービス名が一般名として使われるようになったケースもあります。

これは「名前の付け方で売上は大きく変わりうる」ことを意味します。この辺りは「広告に使うキャッチコピーの付け方」などに通じる部分もあるといっていいでしょう。

さて、「日清oillio」や「ホンダFIT」など一世を風靡する商品・サービスの命名に関わり、「名づけビジネスの第一人者」と呼ばれる岩永嘉弘氏は「商品のネーミングにあたって準備すべきこと」として次の5つを挙げています。

1.言葉の引き出しをいかにして増やすか?
2.辞書で言葉を探し、その意味を探る。予習は入念に。
3.ピンと来た言葉は辞書やネット検索でとことん掘り下げる。
4.時にことわざが巧妙なフレーズを引き連れてくれる。
5.伝える相手をいつも思い描き、ネーミングでの対話を試みよう。

本記事では、5か条のうち1・3・5にあたるノウハウを、岩永氏の著書『最強のネーミング』から抜粋してご紹介します。


好奇心がボキャブラリーを増やす

言葉の引き出しをいかにして増やすか?

1はなかでも特によく言われますね。私など、どう語彙を増やせばいいのか――と尋ねられても答えに窮してしまう。

本が好き、新聞は隈なく読んだ上で折込チラシにまで目を通す、映画の台詞、ポップスの歌詞など印刷される以外の言葉にも関心を持つ……といったことの蓄積が、コピーライターに限らず言葉を生業にする人には問われるわけです。

ただ、未経験者がプロと同レベルをいきなり目指すなんて無理だし、生産的ではない。よくこの手のネット記事で出てくるのが、「気になったコピー、ネーミングはメモしておくこと」といった類のメッセージ。そして、自分だけの言葉のコレクション帳を作るのがオススメ――なんて書いてある。

気づきをメモすることはむろん有効ですが、それで満足していたらなにもならない。むしろ、なんでこの言葉が気になったのだろう──という次元まで辿って考えないと、自分の問題意識も体系立てられません。

ほしいのはただ言葉を放り込んでおく段ボール箱じゃないですよね? それを整理してしまっておけ、必要に応じて取り出せる引き出しでしょ? いったんは箱になんでも入れておいても、整理を進めないと意味がない。

だから、メモをじっくり読み返し、ノートに取るとか、誰かへのメールでいちおうは伝えておくことが重要です。それが自分宛であっても構わない。

問題意識も多方面に向かうでしょうから、各々話題を共有できる相手を持つことも大切。彼らとのやり取りの集積が結果、ちょっとしたテーマごとのノートになっている――という例などもあり得ます。

そこで5の「対話の重要性」がますます大事になってきます。

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