はじめに
「尿の泡立ちがよくて、甘い匂いがする!」
あなたにも、経験がありませんか?
その他にも、「喉が渇きやすく、いつも何かを飲んでいる」「運動不足」「トイレによく行く」ということが当てはまる人は、糖尿病に注意が必要かも知れません。じつは、糖尿病というのは、日本人にとっては身近な病気なのです。
「国民健康・栄養調査」(2016年)によると、糖尿病、糖尿病予備軍をあわせると約2000万人と言われています。日本人の6人に1人は糖尿病または糖尿病予備軍ということになります。糖尿病が強く疑われる人は、男性の5人に1人、女性は10人に1人です(「国民健康・栄養調査」2019年)。男性はとくに気をつけたい病気です。
糖尿病の自覚症状は少なく、健康診断などで発見されることが多いです。糖尿病は、それ自体が直接命に関わることはないのですが、放っておくと恐い病気です。
糖尿病特有の三大合併症とは
糖尿病は、放っておくと合併症を起こします。代表的なものは「糖尿病性網膜症」「糖尿病性神経障害」「糖尿病性腎症」で、これを「三大合併症」と呼ばれています。
「糖尿病性網膜症」は、糖尿病が原因で起こる網膜の障害によって視力が低下する病気で、最悪の場合は失明に至ることもあります。「糖尿病性神経障害」は、足の痺れや冷え、立ちくらみなどの症状が現れます。足に症状が出ると、熱さなどに鈍感になるので、コタツなどで低温やけどになることもあります。さらに知覚がマヒするとケガに気付かないこともあり、そこから細菌が入ると壊疽になり、最悪切断ということもあります。また、低血糖を起こしやすくなり、いきなり意識を失うこともあります。「糖尿病性腎症」は、腎臓の機能が低下する病気です。そのまま放置しておくと人工透析になる可能性があります。
糖尿病はどんな病気なのか?
では、糖尿病というのはどんな病気なのか?というと、何らかの原因でインスリンが低下したり、うまく機能しなかったりした場合に起こる病気です。
食後には、血糖値が上昇するものですが、通常はインスリンの働きによってその上昇を下げることができます。しかし、インスリンの分泌が低下したり、うまく機能していなかったりした場合には、ブドウ糖をうまく処理できない状態になり、血糖値が高い状態が続いてしまいます。この状態が糖尿病なのです。
では、血糖値が高いと、どうして悪いのでしょうか。血糖値が高い状態が続くと、血管にダメージを受けて、動脈硬化が進んでしまいます。動脈硬化は、脳梗塞、心筋梗塞などを招くので、命に関わります。
糖尿病の初期は、自覚症状がほとんどないので、発見が難しいため、40歳以上の方には「特定健診(メタボ検診)」が実施されています。この検査の中には、糖尿病の項目も含まれています。ですから、しっかりと健診を受けましょう。会社員などの実施率は50~90%と高いのですが、自営業者や女性の実施率は2~4割と低いです。
また、糖尿病の状態なのに、受診していない人がいます。さらに、糖尿病受診中断対策包括ガイドによると、一度受診したにもかかわらず、途中で中断してしまう人が年間8%いると推計されます。自覚症状がないからといってそのままにしておくと、前述した恐い合併症が出てくる可能性があります。受診を面倒だと思っていると、治療上のアドバイスを受ける機会を失ってしまい、早期に合併症の症状に気付かないまま、治療の機会を失ってしまうことに繋がります。