はじめに
ターゲットイヤーファンドの根本問題
基本ポートフォリオの比率は、リスク資産が85.3%で、安定資産が14.7%という配分比率になっていますが、運用期間の経過と共に、少しずつリスク資産の比率が下がる一方、安定資産の比率が上がるような調整が行われていきます。
したがって、このファンドを保有している受益者は、何もせず、放りっぱなしにしたままで良いというのが、ターゲットイヤーファンドの建て付けになります。
では、ターゲットイヤーファンドの何が問題なのでしょうか。
それは前回の記事でも触れたように、そもそも「高齢者だからリスク資産を持たないようにするべき」という考え方自体が間違っているのではないか、ということです。
たとえば「ターゲット2030」の場合、今から7年後の2030年には、リスク資産の比率がゼロになり、安定資産100%で2040年まで運用が継続されます。しかし、この間に株価が上昇したとしても、同ファンドの受益者はリスク資産の比率が下がっているので、株価上昇による運用成績の向上というメリットを享受できなくなってしまいます。
それに、恐らくこの手の投資信託を購入する人は、保有している金融資産の一部を投資資金に充てるでしょう。1000万円の金融資産を持っている人が、その全額をこの投資信託の購入資金に充てるようなことは、まずしません。たとえば300万円でこの投資信託を購入し、残り700万円は預金のまま、といったケースが大半だろうと推察されます。
ただ、この場合、自分の持っている金融資産全体で考えれば、700万円を預金にしたままの時点でリスクコントロールはできています。そうであるにも関わらず、ターゲットイヤーファンドを購入した300万円の部分で、わざわざリスクコントロールをする必要性があるのかを、よく考えた方が良いでしょう。
リスクコントロールは、保有している資産全体で行うべきものであり、保有している投資信託単体で行う必要はありません。その前提に立つならば、ターゲットイヤーファンドの商品設計は、「いらぬおせっかい」ということになります。
運用の継続性は担保されるのか?
もうひとつ、重要な注意点があります。
現在、運用されているターゲットイヤーファンドの目標年で最も長期なのは、2065年です。今が2023年だとすると、42年後に目標年を迎えるわけですが、果たしてそんなに遠い未来まで、このファンドを運用し続けられる確信が、運用会社側にあるのでしょうか。
ターゲットイヤーファンドはファミリーファンド形式を採っているので、特定のコースの純資産残高が非常に少なかったとしても運用できるはずで、その点において繰上償還リスクはあまり心配しなくても良いと思われます。ですが、40年超という長い時間があると、経営不振、運用業界の統廃合など、運用の持続性に関わるさまざまな不確定要素が懸念材料として浮かび上がってきます。つまり、投資信託会社の経営体力も勘案しなければなりません。
しかし、多くの投資信託会社は未上場なので、業績、財務情報を開示しておらず、経営状況の把握が困難です。これはターゲットイヤーファンドに限った話ではないのですが、長期運用を標榜する投資信託会社の場合、各種財務情報を第三者が見られるように、情報を開示する必要があるのではないかと考えます。