はじめに
アイスクリームとおでんのお店を同時に経営するのが「国際分散投資」!?
山中:実はこの4種類、みなさんともとっても関係が深いんですよ。何だかわかりますか?
有野:えぇ~、全然わからへん。選べる4種類っていうと、牛丼屋の大手と同じ数とか?
山中:不正解! それに、牛丼屋さんはすき家と吉野家、松屋の3社じゃないですか。
有野:いや先生。なか卯も捨てたもんじゃないですよ。
山中:なか卯は、すき家を運営するゼンショーホールディングスの傘下なので同じ系列……いや、そういう話ではないんですよ。
有野:先生、なんて知的なノリツッコミ(笑) それで、僕らと関係の深い4種類って何ですか?
山中:それは、みなさんの年金を運用しているGPIF、年金積立金管理運用独立行政法人が、資金をその4種類に約25%ずつ振り分けて投資をしています。
有野:へぇ~、そうなんや。年金って、預かってるだけじゃなくって、運用してるんや。それを振り分けて、外国にも投資しているんですね。
山中:前回の授業でも分散投資についてお話ししましたが、国内外の株式と債券に幅広く投資をするやり方を「国際分散投資」と呼び、長期的な資産運用の基本になっているんですね。
有野:でも、日本の年金やし、日本の株と債券だけじゃダメなんですか?
山中:それだと、もし日本の市場が何かしらの理由で大きく下げてしまった時に、運用している資金も大きなダメージを受けることになります。外国の資産にも分散して投資をしていれば、日本経済の調子が悪い時も、安心して投資を続けることができるんですよ。
有野:なるほど! 日本株だけだと、日本がコケた時にまずいですよ、ってことか。「絶対コケません!」とは国も言われへんか、国民の大事なお金やからか。
山中:ポイントは、株式と債券が“シーソーの関係”にあるということなんです。
有野:シーソー? 公園のガッタンボッコンするアレですか?
山中:そうです。リーマン・ショックのような異常時を除けば、基本的には株が上がる時は債券は下がり、反対に債券が上がる時は株が下がる傾向があるんです。だから、株と債券を乗せたシーソー関係というわけですね。
有野:でも、両方買っていたら、ガッタンボッコンでプラスとマイナス。どっちかが上の時はどっちかが下。結局、それだと儲からない気がしますけど、どうなんですか?
山中:株の調子がいい時は、大きなリターンが期待できます。でも、ダメな時は大きく下がってしまうこともあるんです。ハイリターンは期待できないものの、安定した利回りが得られる債券を組み入れることで、長期で安定した運用が実現できるんですよ。株式と債券の特徴、国内資産と海外資産への投資の特徴を組み合わせる、これがまさに先ほど言った「国際分散投資」のお手本なんですね。
有野:国際分散投資! なんだかすごそうな用語が出てきた。要は、その「国際分散投資」が大事なわけですね。
山中:もう少しわかりやすい例を出してみましょう。有野さんがアイスクリームのお店を経営するとしましょう。アイスクリーム店は、夏は稼げますが、冬はどうでしょうか?
有野:寒〜い冬に、暖かい部屋で食べるアイスは美味しいのは分かる。でも、好みは分かれるし、やっぱり暑い日が一番食べたくなるから、冬の売り上げは下がります!
山中:そう、冬に稼ぎがないのは厳しいですよね。そこで、冬はおでんのお店をやることにしましょうか。それなら、冬でも稼ぐことができます。この「夏はアイスクリームのお店、冬はおでんのお店で稼ぐ」というのが分散投資の考え方です。
有野:なるほど、わかりやすい! でも、それならお相撲さんだったら夏でもおでんのお店に来そうだし、冬でもアイス食べそうだから、両国国技館の近くでやっちゃいましょう!
山中:そういう話ではありません(笑)