はじめに
実際の判例で詐欺の証明に利用された事情
弁護士の感覚で、「これは投資詐欺だな」と感じていても、実際に損害賠償請求の裁判で勝つのは難しいです。
その理由として、そもそも投資自体が必ず儲かるということはなく、損をする場合もあるからです。そして、投資に用いたお金が元本割れすることも当然ありえます。ですから、「損をした」という事実だけをもって詐欺である、ということにはなりません。投資詐欺と認められるためには、相手が法律上の「不法行為」に該当する行為をしたと、被害者のほうが証明しなければいけません。しかし、そのための証拠が乏しく、非常に苦戦することが多いです。
私が実際に行った裁判で参考にした判例『東京地判平30.12.19(平成29年(ワ)第19512号事件)』を用いて、裁判所がどういう理由で不法行為を認めたかを紹介したいと思います。
事案の概要
原告は、被告から、AというSNSサービスが発行したポイントを購入して、購入したポイントを用いて広告権を購入すると、それによって発行されるオンライン電子クーポンが時間の経過と共に単価が上昇し、約2倍になったところで分割され、会社は年3回ないし年4回の分割を目標としている旨の記載がされた資料や、195万3,000円の広告権を購入すれば4回転目で2,030万4,000円、5回転目で4,060万8,000円となる旨の記載がされた使用や、6ヵ月間でポイントを8回売却した場合の売却益として123万4,200円等の記載がされた資料を用いて、投資をすれば必ず儲かると勧誘された。
さらに、原告は被告から、Bという別の投資についても、元本が保証され、高配当を期待できると説明をして投資するよう勧誘された。原告は、被告のAとBの2つの投資の説明を信じ、被告に対し金銭を拠出した。
しかし、その後原告が被告に対して、Bに投資した資金の返還を求めたが、被告から原告に対して資金が返還されることはなかった。その後、原告は、被告から数万円の支払いを受けたのを最後に、被告と連絡がとれなくなり、Aの投資のために利用していたアプリ等へログインすることができなくなった。