はじめに

判決の意味するところ

この事案について、判決の概要は下記になります。

(1)投資により利益が得られることのみを強調し、なぜ利益があがるのか、その仕組みが不明である資料を用いて投資の仕組みを説明した
(2)原告が投資の仕組みや資産的な裏付けが不明で経営的な問題や技術上の問題が生じた場合における保護も不明瞭であること等の危険性を知っていれば、原告は金銭を拠出しなかったと考えられる
(3)被告は、これらの重要な事実を隠しつつ、専ら利益を得られる可能性を強調して勧誘した者と認められるから、被告による欺罔行為が肯定される
(4)その結果、原告は短期間で高額の見返りを受領できると誤信して被告の指定する口座に現金を送金したから、金銭的損害が認められ、不法行為の成立を肯定することができる
(5)被告が、自らの投資の態様や投資対象の仕組み、運用の状況等について十分に理解しておらず、その裏付けの確認も十分ではなかったにもかかわらず、原告に対して金銭を拠出することを勧誘し、原告に安定的に相当額の収益を得ることができると誤信させて被告に金銭を交付させており、不法行為が成立する

この判例は、どういうことを言っているのでしょうか?

事案の概要から、原告(投資をした人)が、被告(原告に投資話を持ち掛けてきた勧誘者)の行為が不法行為にあたるとして、投資のために渡した金銭相当額の損害が発生したとして損害賠償請求をしていることが分かります。裁判所は原告に対して、被告がどういう勧誘をしていたかということに着目し、その行為が不法行為に該当するかを判断しています。判断にあたって裁判所が指摘しているのは以下3項目で、被告の勧誘行為が不法行為に該当すると判断しました。

  • 殊更に利益が得られると強調していたこと、利益があがる仕組みが分からない資料をしめしていたこと
  • 投資の危険性がきちんと説明されていれば、原告は投資しなかったと考えられること
  • 原告は、被告に対して、あえて投資の危険性を隠し、専ら利益が得られることがけを強調したこと

このことから、被害にあったのではないかと弁護士に相談する場合、どういった勧誘をうけたのか、ということが重要視されることがわかります。示された資料などがあれば、そこからもリスクについての説明がないことを客観的に証明していくことができるとわかります。メールなどでの説明のやりとりや、ネットで紹介されている投資の仕組みの説明などを証拠として保存しておくことの大切さがわかります。

もちろん、詐欺師も失敗から学ぶので、後にメールのやりとりや、説明のための資料が残らないように工夫をしてくるでしょうから、相手が消す行動をとる、、つまり、まだ騙されていると相手が誤解している間に、いち早くスクリーンショットなどを利用して、証拠を残しておくことがとても重要です。

もう少し、判決内容を検討していきましょう。損害賠償請求をするためには、金銭的な損失の発生が必要になりますので、(4)では金銭的な損失が発生していることを確認しています。

そして(5)では、勧誘者が「自分も同じ対象に投資していて、どんな仕組みなのかもよくわかっておらず同じように損しており、自分だって被害者なんです」といった言い訳をした場合に、その言い訳は通用しないですよ、という判断を示しています。判決は、自分でもよく理解できていないようなものを、他人に対して安定的に相当額の利益を得られる、などと伝えて勧誘すること自体が不法行為である、と言っています。

勧誘者が、「自分も被害者でよくわかっていなくて、騙すつもりはなかったんです」といった旨の発言をすることはよくあります。そういう話を事前にされていると、被害者の方は不安になっていたり、仲間意識を持ってしまうことがありますが、この判決から、そういった心配や配慮はいらない、ということが分かります。

勧誘者の言葉に惑わされずに、警察や弁護士などにきちんと相談してください。相談によって、必ずしも紹介した判例のように、善い判断を得られるとは限りませんが、相談いただかなければ、善い判断を得る可能性を作り出すこともできません。

なにより、自分が詐欺にあったとはっきり明言されないと、なかなか詐欺にあったことを認められず、不思議なことに別の投資話に投資を繰り返してしまう、ということもあります。そういう意味でも、適切な窓口に相談することはとても大切です。


投資詐欺について、具体例を用いてじっくり書かせていただきました。大切なことは、うまい話には裏がある、ということを忘れてはいけないことだと思います。

ご自身に心配がなくても、ご両親や友人が最近投資で大きく儲けた、と喜んでいるような時は、ちょっと今回の記事のことを思い出していただき、信頼できる投資なのか、一緒に確認しあうことも大切だと思います。

残念ながら、投資詐欺では泣き寝入りになっているケースも数多くあります。裏を返せば、それだけ楽して儲けている悪い人たちがたくさんいる、ということです。残念ながら、楽して儲かるのであれば、悪いことをする人は減らずに増えていきますから、一人一人が気を付けて、悪い人たちに得をさせない、という意識を持つことでしか、投資詐欺の被害が減らないというのが現状ではないでしょうか。

少しでも不安に思うことがあった方は、警察や弁護士に相談してください。弁護士は、お住まいの都道府県の弁護士会や消費生活センターに相談いただくと、専門性の高い弁護士が相談担当をしている法律相談などを案内されると思います。

今回の記事が、投資詐欺の被害者減少につながることを心より期待しております。

【前編】マッチングアプリや経営者からSNSで…弁護士が明かす投資詐欺の実例

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