はじめに

毎月分配型の黒歴史

今回の成長投資枠の排除基準にある「毎月分配型」は、つみたてNISAにおいても認められていません。分配そのものは利益のお裾分けともいえることなので、特に問題はないのですが、それでも本来長期の運用においては、利益は分配金として払い出さず、利益を再投資し利益が利益を生む仕組みにする「複利の効果」を狙うことがよいとされています。

利益を再投資して、運用効率を高めるという意味では、毎月分配型の投資信託を排除したのは納得感があります。しかし、あえて「毎月」分配型を排除したのには、そこに過去の黒歴史があることが一番の理由です。

毎月分配型の投資信託は、特に高齢者の方に多く販売された投資信託です。「年金のように分配金が入る」という触れ込みで、大変人気になりました。前述した通り、利益のお裾分けという意味での分配金は問題ないのですが、ここでは毎月分配することを先に約束していた点が問題の始まりでした。

投資において、「毎月安定的に決まった利益がでる」なんてことはあり得ません。しかし、毎月分配を出さなければいけない投資信託は、そのうちに「元本を取り崩して」分配に充てるようになりました。投資元本は投資家のお金ですから、それを取り崩すというのは、損失を出すことになります。

毎月分配型の投資信託は、タコが自分の足を食べるように、自分自身の元本を取り崩しているのですから、「何かおかしい」と思われても不思議ではないのですが、当時は元本を取り崩して分配金を出すことを「特別分配金」と呼んでいたのも、運用側から見たら都合のよいカモフラージュでした。

通常の利益の分配は、「普通分配金」と呼ばれます。利益を分配するのは、「普通」だからです。一方、投資元本を取り崩して分配金に充てるのは、普通ではありません。従って「特別分配金」と呼ぶ。なんとも不思議な理論ですが、主な投資家である高齢者の方たちにとっては、「特別」という言葉がもたらす心地よさに、本質的な問題点が長らく明らかになることなく運用が継続されました。

販売側にとっては、「分かりやすいセールスポイント」のある投資信託を、どんどん売りたいという気持ちがあるのでしょう。しかし、顧客本位の業務運営を考えると、毎月分配ありきの投資信託は長期の運用にはそぐわないと、新NISAでは100%排除となりました。

毎月分配型が排除されるのは、新NISAにおいても金融庁は投資家利益を守るために金融機関への監視を強めていくという意思表示のように思われます。

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