はじめに

年金を受給して投資する場合、繰り下げ受給に追いつくための運用利率は?

下準備が整いました。ここからは、「年金の繰下げ受給」と「受給して投資」を比較していきます。今回の前提条件の場合、70歳で年金の受給を開始した場合、毎年219万円が手取りで受け取れます。60歳から年金の受給を開始し、その金額を全額投資に回し、70歳以降は、「公的年金&運用取り崩し」が年219万円を超える運用利率を考えていくことになります。65歳の場合も同様に考えます。

なお、年金は2ヶ月に1度、2ヶ月分が振り込まれるので年6回に分けて投資をすることも可能ですが、年複利で計算することにしました。あらかじめご了承ください。

試算結果は次のとおりです。

60歳~90歳の間、65歳~90歳の間に年3.0%で運用できれば、70歳からの繰り下げ受給と同等の水準になることがわかりました。よって、年3.0%を超えた運用ができるならば、年金を早くに受給して投資をした方が正解ということになります。

年金に頼らずとも生活でき、年3.0%超の運用に自信があるなら「繰り上げ」という手も

そろそろ結論をまとめます。

60歳、65歳で年金の受給を開始し、その手取り額を70歳まで投資を行い、その後は年金の受け取りに加えて90歳まで運用を続けながら取り崩しをした場合、新NISAで年3.0%を超える運用ができれば、70歳「繰り下げ受給」よりも受け取れる金額が多くなることがわかりました。なお、税金・社会保険料は他の所得・年齢・家族構成・お住まいによって変わります。あくまでも参考情報としてご確認ください。

年金を受給しなくても生活できるお金がすでにあり、上記の運用利率以上に増やせると自信があるのであれば、60歳、65歳で受け取りを開始して、その年金を投資に回す手もあるかもしれません。

しかし、年金を受給しなくても生活できるようなお金がない場合は、この選択をしない方が良いでしょう。運用で失敗したら悲惨です。人生一度きり。60歳で繰り上げ受給して、運用で失敗した場合は、60歳時点で確定した年金額で死ぬまで生活しなければなりません。運用しながら取り崩すフェーズでも、常にマーケットにハラハラしながら日々過ごすことになるでしょう。そういった、エキサイティングな生活をしたいのなら、良いのかもしれませんが、老後は穏やかに生活したいのであれば、全くもって向いていませんね。それに、老後にたくさんお金を増やしたところで、あの世にお金は持っていけません。

今一度考えたいのは、「年金の繰り下げ」で増える増額率は「確定」であることです。つまり、価格変動リスクがないということ。マーケットが暴落しても、年金額が減ることはなく、生涯にわたって、リスク無しで受け取れるのは大きいのではないでしょうか。年金は「賦課方式」といって、年金支給のために必要な財源を、その時々の保険料収入から用意するので、インフレにもある程度対応できる面もあります。また、家族がいる場合、自分が死んだあとは、遺族年金がもらえる点も考慮したいです。そう考えると、「年金の繰り下げ」を選んだ方が良いと筆者は思います。

ここまで、色々と計算して考えてきましたが、結局は自分の寿命次第で正解は変わってきます。自分が何歳まで生きるのかわからない、その不確実性に備えるのが保険であり、年金が該当します。年金は年金保険料とあるように、あくまでも「保険」なのです。年金が保険であることを踏まえて、いつから年金を受け取るのが良いのか、皆様の納得のいく選択をしてもらえればと思います。

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