はじめに

「青色申告」の特典を利用していない

「開業届」を提出した時に、なにも申請しなければ「白色申告」の扱いになります。「青色申告」は会計処理が面倒というイメージがあるかもしれませんが、実は多くの特典があることをご存知でしょうか?

特典1:65万円または10万円の控除を受けることができる

複式簿記による正しい方法で帳簿をつけ、青色申告を行うことで、一部の場合を除き、65万円または10万円を所得から差し引けるようになります(青色申告特別控除)。年間の収入から控除額を引けるので、税金(所得税・住民税・健康保険料)を少なくする効果が期待できます。

特典2:赤字を3年間繰り越すことができる

起業当初は収入よりも経費が多くなりがちです。もしも赤字(損失)になっても、翌年以後の黒字と相殺することができるため、将来支払う税金の金額を減らせることが利点です(純損失の繰越控除)。このほかに、「少額減価償却資産の特例」や「貸倒引当金」、「青色事業専従者給与」などの特典を利用することで、同様の効果が期待できます。

青色申告するためには、事前に税務署へ申請書の提出が必要ですが、一度提出すれば毎年申請を出す必要はありません。

新規開業した場合は、業務を開始した日から2ヶ月以内。現在、白色申告を選択している場合は、青色申告したい年の3月15日までに「青色申告承認申請書」を納税地の所轄税務署長に提出しなければなりません。本年度の申告をする際、一緒に「青色申告承認申請書」を提出しておくと、うっかり忘れてしまう失敗が回避できます。

節税のため経費を増やし、年収を抑えている

確定申告では売上から経費を引いたもの(売上-経費) に対して税金を計算するため、経費を増やすことは節税につながります。そのため、できるだけ経費を増やそうと、どこかに忘れている領収証がないかと慌てて探す方も。

個人事業主には退職金がないことが多く、公的年金も国民年金しかありません。老後に備えるためには心細いので、自助努力が必須です。

国民年金に上乗せする「付加年金」、じぶん年金つくりに使える「国民年金基金」や「iDeCo(個人型確定拠出年金)」、退職金代わりとなる「小規模企業共済」の掛金は、全額が所得控除の対象となり、所得税や住民税が軽減されます。節税しながら将来に備える有効な手段として、利用してみてはいかがでしょうか。

ただし、事業資金の借入や住宅ローンの申し込みを検討している場合には、赤字はご法度です。金融機関がお金を貸し出す際には、ちゃんと返してもらえる相手かどうかを確認します。

個人事業主の方が融資を申し込む際には、審査の必要書類として「3期分の確定申告書」や「納税証明書」の提出を求める金融機関がほとんどです。「税金対策で赤字にしている」という理由は通らず、融資の許可が出ないこともあります。目の前の節税ばかりに気をとられず、将来を見越して所得と納税額のバランスを考えておきましょう。

申告書の控えをもらい忘れる

事業資金の借入や住宅ローンを組む際には、所得の証明が必要です。サラリーマンであれば源泉徴収票を提出すればよいのですが、個人事業主の場合、その人の収入の内訳を明らかにする資料として、確定申告書を所得の証明とするのが一般的です。

奨学金の申請や保育園の入園手続きでも提出を求められることがあるため、税務署の「収受日付印」のある確定申告書の控えを手元に置いておくと安心です。

税務署へ確定申告を郵送する場合は、提出用と控えの2部を用意し、切手を貼った返信用封筒を同封しておくと「収受日付印」をついた控えが返却されます。

筆者は「小規模事業者持続化補助金」の申請をする際に、確定申告の控えが必要となりました。いつ何時必要になるかわからないので、申告時に毎回控えを取っておくことをおすすめします。

もし控えをもらい忘れてしまった場合は、確定申告をした税務署に「保有個人情報開示請求書」を提出することで開示請求ができます。ただし開示請求手数料に300円かかること、再発行まで時間がかかることがネックです。写しの送付を希望すると開示実施手数料のほか、送付に要する費用(郵便切手等)も必要になります。

さて、ここまで確定申告で事前に気をつけていただきたいポイントをお伝えしてきましたが、「どうしても自分で申告できない」と思ったら、引き伸ばさずに早めに税理士にお願いしましょう。期限ぎりぎりに駆け込んでも断られるか、費用が高くつく覚悟が必要です。

確定申告は個人事業主にとって大変なイベントですが、1年間を振り返るよいきっかけとなります。失敗例を参考に、じっくりと準備に取り組んでください。

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