はじめに
2024年から開始が予定されている新NISA制度。配当も非課税になるため、配当投資において新NISA制度をいかに活用するかで、その成果は大きく変わってきます。
そこで、X(旧Twitter)フォロワー数14万人で元サラリーマン投資家の長期株式投資(@budoukamail)氏の著書『半オートモードで月に23.5万円が入ってくる「超配当」株投資 日経平均リターンを3.86%上回“割安買い”の極意』(KADOKAWA)より、一部を抜粋・編集して新NISAを活用した配当投資戦略について解説します。
これからの投資戦略の話をしよう
株式投資の世界には、様々な投資手法が存在しています。
それぞれに特徴があり、その優劣を議論することにはさして意味がなく、個々人が置かれた環境や投資する目的に応じて選択することになります。
本章では、株式投資における代表的な投資手法について紹介し、その上で、2024年から始まる新しいNISA制度を踏まえて、どのような投資戦略が有効たりえるかを考えていきたいと思います。
バリュー投資:客観的なデータの積み上げから投資を判断
バリュー投資とは、投資先企業の業績や資産価値等を勘案して、株価が割安な水準にあると考えられる銘柄へ投資する手法です。
投資判断のモノサシとして、PERやPBRなど伝統的な投資指標を用います。
基本的なルールさえ覚えてしまえば、多くの投資情報媒体で紹介されている情報の意味を理解して、自分で試行錯誤しながら練度を高めていくことが可能となります。
バリュー投資の父と呼ばれ、ウォーレン・バフェットの師であるベンジャミン・グレアムは、定量分析の際に活用できる手法を紹介しています。中でも有名なのが「ミックス係数」と「ネットネット株」の概念でしょう。
「ミックス係数」とは、PER×PBRが22.5を下回れば割安とされる考え方です。
これは、PER15倍、PBR1.5倍程度が目安となっているといわれていますが、割安株が数多く存在している日本の株式市場では、もう少し基準を厳しくしてもよいでしょう。
たとえば、PER10倍、PBR1倍程度を目安にして、PER10倍×PBR1倍、つまり、ミックス係数が10未満の銘柄を投資対象とするなど、あと一手間を加えることで、より負けにくい投資となります。
「ネットネット株」とは、流動資産から総負債を控除した金額の3分の2よりも時価総額が下回る銘柄のこと。
(流動資産−総負債)を正味流動資産と呼んでいますが、つまりは、この正味流動資産の3分の2程度の時価総額となるまで株価が下がれば、安全域を確保した投資ができるという発想です。
バリュー投資の本質は、本来あるべき価値に対して、株価が安い銘柄を探して投資していくことにあります。
もともと安い銘柄へ投資するため、株価の下落余地も少なく、相対的に負けにくい手法といえるでしょう。
グロース投資:当たればでかいが難度は高い
グロース投資とは、投資先企業の売上高や利益が伸長している銘柄、あるいは今後、大きく伸長しそうな銘柄へ投資する手法のこと。
成長株投資とも呼ばれています。
投資判断としては、高いROEや売上高の成長率などが一般的に用いられます。
将来性や成長性を期待して買われることが多いため、PERやPBR等の投資指標は割高になりがちです。
また、将来の成長余地の大きい銘柄が選好されることから、時価総額の小さい小型株を投資対象としているケースが多いのも特徴でしょう。
配当は無配であることが多く、利益は成長を加速させるため、事業投資を優先させます。
成長株投資の父と呼ばれ、ウォーレン・バフェットに大きな影響を与えたとされる、フィリップ・フィッシャーは、その著書『株式投資で普通でない利益を得る』で、以下のような銘柄選択における15のポイントを紹介しています。
読者のみなさんの投資判断に大いに役立つものばかりで、今後の投資人生における財産になってくれると思いますので、少し長いのですが引用します。
- ポイント1 その会社の製品やサービスには十分な市場があり、売り上げの大きな伸びが数年以上にわたって期待できるか
- ポイント2 その会社の経営陣は現在魅力のある製品ラインの成長性が衰えても、引き続き製品開発や製造過程改善を行って、可能なかぎり売り上げを増やしていく決意を持っているか
- ポイント3 その会社は規模と比較して効率的な研究開発を行っているか
- ポイント4 その会社には平均以上の販売体制があるか
- ポイント5 その会社は高い利益率を得ているか
- ポイント6 その会社は利益率を維持し、向上させるために何をしているか
- ポイント7 その会社の労使関係は良好か
- ポイント8 その会社は幹部とのよい関係を築いているか
- ポイント9 その会社は経営を担う人材を育てているか
- ポイント10 その会社はコスト分析と会計管理をきちんと行っているか
- ポイント11 その会社には同業他社よりも優れている可能性を示唆する業界特有の要素があるか
- ポイント12 その会社は長期的な利益を見据えているか
- ポイント13 近い将来、その会社が成長するために株式発行による資金調達をした場合、株主の利益が希薄化されないか
- ポイント14 その会社の経営陣は好調なときは投資家に会社の状況を饒舌に語るのに、問題が起こったり期待が外れたりすると無口になっていないか
- ポイント15 その会社の経営陣は本当に誠実か『株式投資で普通でない利益を得る』(フィリップ・A・フィッシャー/パンローリング)より
以上15のポイントを見ても分かるとおり、グロース投資では、数値化することが難しい定性情報が重要な判断材料となります。
したがって投資家には、長い経験や深い知識により培われた能力が求められ、相対的に難度の高い投資手法といえます。