はじめに

「貯蓄から投資へ」で起きる変化

2023年6月30日(金)、資産所得倍増元年と称して岸田総理から「貯蓄から投資へ」という取り組みが発せられました。日本の文化に根付いてる「貯蓄」という流れを変え、「投資」へと促す様相です。

日本ではなかなか「投資」という文化が浸透せず、逆に「投資」をタブー視する風潮も長らく続いてきました。確かに私が証券会社に入社した35年前の個人投資家といえば、一部の「お金持ち」と呼ばれるような方々が中心でした。売買手数料もとても高くて一往復(売買)で2万円くらいだったと記憶しています。

時代は変わり今やネット証券での売買手数料は無料を謳う時代となりました。政府は国民のお金を眠らせておくのではなく、積極的に活用させるべく、株式市場を通して経済の現場へ循環させることで景気の活性化を実現したい考えです。

世界の時価総額トップの米国市場は、1989年と2021年の時価総額を比べると約15倍ほどになっています。またこの期間、米国のダウ平均株価は日本の平均株価の約14倍に成長しているのに対し、日本の株式市場は、ほぼ横ばいが続いています。

この違いを顕著にさせた要因として、米国企業には「会社は株主のもの」という考えが強く根付いていることが考えられます。企業に利益がもたらされたら、株主への配当金として還元するという流れが、当たり前のように続いているからです。

配当金を年々増やし連続増配をする企業も多く存在し、高配当が期待できる点はとても魅力的です。積極的に株主還元する企業は優良企業とみなされ、株主との距離感が近く、良好な資金の循環がされていることでWin-Winの関係性が存在し、それは市場の成長に不可欠です。

日本でも、東証が企業へ株価を意識した経営を促した事により、ようやく変革が進みつつあります。増配や自社株買いなど株主還元を積極的に行う企業は確実に増加しています。

そうした変化もあり、TOPIXはバブル後の高値を更新しました。上場来高値銘柄も多く、トヨタ自動車(7203)やホンダ(7267)、日立製作所(6501)やデンソー(6902)、三菱商事(8058)など、日本を代表する企業も含まれています。

また、高配当ETFなどの上昇も目立ちます。ただし、日本のプライム市場の時価総額は840兆円規模です。残念なことに米国と比較すると、依然として7分の1程度です。日本企業の良い変化が今後の日本市場の鍵を握っており、それが表面化すれば、株価の牽引役である海外投資家は日本市場に資金を流入してくると思われます。

一個人がお金を生み出すという心構えや、投資に前向きな社会を目指すという政府の指針がどのように日本に根付いていくのか、今後の行方を見守りたいと思います。

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