はじめに

特例措置があるうちに取引先と話し合うこと

有野:これまでインボイス制度について、なにが騒がれているかわからへんかったし、わかろうともしていなかったんですけど、先生のおかげで大枠は理解できた気がします。

小島:そう言っていただけると、嬉しいです! インボイス制度は、そもそもの消費税の仕組みや課税事業者と免税事業者の分類、仕入税額控除、さらに特例などが絡みあっていてわかりづらいのは確かですが、制度がスタートして直ちにガラッと状況が変わるとは思えませんし、じっくり対応していくべきだと思いますね。

有野:でも、声優さんが「インボイスが始まると廃業の危機」なんて切実に訴えているのを見ると、やっぱりそういう影響は避けられへんのかなぁ、なんて思ってしまいます。同じように芸人も、よくわからないままインボイスに登録して、ギャラが減って困る、なんて若手とか出てきそうですね。

小島:何度も言っているように、買い手側の事業者も、どう対応すればいいのか悩んでいるところが多いと思います。売り手=声優さん側と、買い手=声優さんを雇う側が積み上げてきた関係にもよるでしょうし、憶測にはなってしまいますが、すぐに「インボイスに対応しないと仕事を頼まない」につながるかというと、そうはならないと思いますよ。

有野:大きい会社も個人事業主も、当分は様子見で大丈夫な感じですかね?

小島:個々の事情はあるでしょうから、心配になる気持ちはよくわかります。ただ、急激に状況が変化しないように、さきほどの「2割特例」や「少額特例」といった特例措置が設けられているわけですし、その措置が講じられている間に、取引先との話し合いや周囲の状況の見極めも含め、何らかの答えを出す必要があるかもしれません。

有野:その特例措置の期限って、もう決まっているんですか?

小島:現状では2割特例の期限は2026年9月まで、少額特例は2029年9月までです。

有野:じゃあ、3年くらいは様子見でいいのかな? ちなみに、いくら反対しても、制度自体が覆る可能性は低いんですよね?

小島:そうですね。第1回目の授業でお話ししたように、インボイスは消費税が導入された1989年、30年以上前から導入を予定していた制度です。さまざまな理由で現在まで延び延びになっていましたが、政府としては“満を持して”の判断だと思いますので、インボイス制度自体がなくなることはないでしょう。

有野:そうか~。消費税も始まる時はめっちゃ反対されたけど、いまじゃ、どんどん上がってって、普通になってますよね。インボイスも将来的には当たり前の制度になるかもしれへん、時代の流れには逆らえんということか。かわりに非課税のなんかが出てきて欲しいなぁ、NISAみたいなやつ。

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