はじめに
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は内藤忍氏がお答えします。
春に子供が生まれ、現在、育児休暇を取得しています。これまでは夫婦二人の共働き生活だったため、毎月の生活には特に困っていませんでした。しかし、来年度から時短勤務となり、収入が下がること、そして、これから必要となる教育費のことを考えると、不安でいっぱいです。家計改善のため、なにから手をつけたらよいのか、アドバイスいただけると幸いです。
1.現在の収入金額と支出金額
収入:手取り40万円(夫22万円、妻・育休手当18万円)
支出:25万円
(食費6万円、光熱費2万円、通信費2万円、日用品3万円、教育費4万円、医療費1万円、衣服代2万円、交通費1万円、交際費2万円、社会保障費2万円)
積立:15万円(支出の残りを以下のように管理)
・年払い保険料の積立:4万円
・積立投信:2万円
・純金積立:1万円
・子供の教育費積立:3万円
・予備費:5万円
2.今後の収入金額と予測される特別な支出
今後の収入金額:手取り37万円
今後の支出:今の支出に加え、保育料が月8万円(来年4月から)
3.保有する金融資産
合計:350万円
(円預金220万円、積立投信25万円、国債50万円、外貨預金30万円、確定拠出年金20万円、金積立5万円)
4.現在の負債(住宅ローン・借金など)
570万円(夫婦の奨学金・利率1%)
5.保険契約の有無
夫:低解約返戻型終身保険(15年払)年20万円、個人年金保険 年8万円
妻:低解約返戻型終身保険(15年払)年18万円
(20代後半 既婚・子供1人 女性)
内藤: ご質問ありがとうございます。
堅実なライフスタイルをご夫婦で実践されているようですね。資産を形成していくために理想的な状態だと思います。
今後、一時的に奥さまの収入が減少するということですが、家計のやりくりによってリカバーできる範囲ですので、あまり心配する必要はないでしょう。
奨学金の早期返済も視野に
資産状況を拝見するなかで気になったのが奨学金です。残高約600万円で年利1%での借入ということですから、年間で約6万円利息の支払いをしていることになります。
日銀がマイナス金利を導入してから、国内の預貯金の金利は一層低下し、ほとんど利息の付かない状態になっています。
質問者が保有する金融資産のなかには、円預金が220万円入っています。また国債も50万円ありますから、これらの資産の利回りと奨学金の金利差は持ち出しになっていることになります。
不測の事態のため、資産の一部は普通預金のような流動性の高い状態で持っておく必要がありますが、一部は奨学金の早期返済に回しても問題ないと思います。
2つのチェックポイント
また資産形成に関して、外貨預金、積立投信、確定拠出年金の内容について、もう少し詳しく分析してみましょう。
確定拠出年金は、ご自身で投資する商品を選択する仕組みになっているため、現在、選択した商品がどのようなものか再確認する必要があります。また、積立投信についても同様です。
チェックポイントとしては、投資対象とコストの2つがあります。
投資対象とは、例えば投資信託の場合、信託したファンドの投資先が株式なのか債券なのか、あるいは国内なのか海外なのかといった分類です。なかにはバランス型ファンドと呼ばれる、1つのファンドで複数の投資先に投資している商品もあります。
ご自身が選んでいる商品の投資対象をチェックし、同じ種別の商品の投資額を合算してみることで、資産全体でどのようなリスクを取っているのかを把握することができます。
また、外貨預金をはじめとする外貨建て資産の比率を計算してみれば、為替変動に対してのリスクについても知ることができます。
そして、コストに関しても確認しておきましょう。投資信託の場合は、購入時の販売手数料と保有時の信託報酬という2つのコストが大きくかかります。
特に信託報酬は、保有している投資信託に日割りでかかってくるものですから、チェックしておきましょう。
同じ日本株に投資する投資信託でも、信託報酬には年間で1%以上の開きがあります。10年間投資すれば累計で10%の差になるため、無視することはできない額です。
ネット証券で取り扱われている低コストのインデックスファンドであれば、信託報酬は年間1%以下です。同じ投資対象であれば、低コストのインデックス運用商品を選ぶのが原則です。
このように資産運用では、小さな積み重ねによって生じる投資方法の改善が、長期で大きな成果となって表れてきます。まだ20代、時間はたっぷりありますのでオーソドックスな投資手法をしっかり実践し、着実に資産形成を進めてください。