はじめに
企業に対する名誉棄損
例えば、企業に対して名誉棄損となるような書き込みをした場合、これによって営業損失が出たことを企業側が証明可能なのであれば、その営業損失が「損害」になります。したがって、損害賠償の金額は比較的高額になりますし、和解のための適正な金額も合わせて高額になってきます。
実際にどういった書き込みが企業に対して名誉棄損を構成するのか、というのは、とても複雑な問題になります。というのも、公共性と公益目的がある場合であり、公表した内容が事実であると自ら証明した場合は、名誉毀損の要件を備えていても責任追及を免れると考えられているからです。真実であることの証明については、前提とする事実が重要な部分について真実であることの証明があれば足りると考えられています(最判:平成9年9月9日)。
また、真実であると書き込みをした人が信じていたが、実際は真実ではなかったような場合については、誤信につき確実な資料・根拠に照らして相当の理由がある場合には、名誉毀損罪の故意が否定されると考えられており、免責が認められると考えられています(最判:昭和44年6月25日)。
編注:初出時、誤字がありました。
企業活動については、内容によっては公共性と公益目的が認められる可能性があると思いますが、免責されるのはあくまでも例外なので、基本的には免責されない可能性が高いということは念頭に入れて、注意喚起の投稿をするか否かを判断してください。
個人に対する名誉棄損
では、営業損失を考慮できないような、個人に対する名誉棄損の場合にはどうでしょうか?
多くの場合、精神的な苦痛に対する慰謝料として、損害を補償することになります。この場合、計算式や数的な根拠を示して「これだけの損害が発生しましたよ」と証明することが困難です。被害者の方は大きな金額を示しがちですが、実際に裁判をベースに考えると、数万円から数十万円程度に落ち着くことが殆どです。
したがって、和解の時に数百万円の金額を掲示されている場合には、はたしてそれが適切な金額と言えるのか、弁護士などの専門家に相談するべきだと考えます。適切な金額は事案によって異なってきますので、自分の肌感覚だけで判断することは控えたほうがいいでしょう。ただし、身に覚えがある書き込みなのであれば、その行為によって確かに相手を傷つけたわけですから、できるかぎり真摯な対応を行い、誠心誠意謝罪をして、自分自身の過ちを深く反省していただきたいです。