はじめに
訴訟に発展した場合
結果、和解がまとまらず訴訟に発展した場合、その後はどのように手続きが進むのか簡単に説明いたします。被害者が訴訟を提起すると、訴状が届き、裁判が始まります。訴状は自宅に届きますから、その時点で家族に発生している問題が知れてしまう可能性があります。
相手の請求に納得できずに名誉棄損の成立を争う場合には、半年から1年程度、裁判が続きます。その後、裁判所でも和解の提案がされ、そこでも和解が出来なければ、判決になります。判決で被害者にお金を支払なさいと判断された場合、不服があれば第二審に進むことが出来ますが、第二審に進まない場合には、判決が確定します。早期に被害者に支払いをするべきですが、ここで支払いをしないでいると、給与債権を差し押さえられたり、銀行の口座を差し押さえられたり、ご自宅の不動産を差し押さえられたりする可能性が出てきます。給与債権の差押を受けると、会社に「どういう書き込みをして、裁判で敗訴したのに、支払いをしていません」ということが伝わってしまいます。あまり知られたくないことだと思いますので、判決が出た場合は、きちんと被害者に支払いをしましょう。
裁判を起こされてこれに応じる側であても、弁護士に依頼すれば弁護士費用はかかりますし、ご自身で対応する場合には、裁判所に提出する書面の作成や平日の仕事の時間に指定される裁判に出席する必要が出てくるという点もポイントです。まったく負担なく裁判を終えるということも難しいですから、和解をするかしないかを選択する際には、その点もきちんと考慮したほうがいいでしょう。
私も弁護士として、過去に「知り合いが不倫していないのに、あたかも不倫をしているかのような投稿をしたことが本人にばれてしまい、そのことで責任追及をすると言われている。どうすればいいでしょうか?」という相談を受けたことがあります。今更削除しても、その時の書き込みをなかったことにはできませんし、実際にしていない不倫のことで、その方の家庭は大混乱になっていることでしょうから、相手に謝罪をして許してもらう以外に、ことを収める方法なんてありませんよ、というアドバイスしかできませんでした。書き込んだときは面白半分でも、時間が経ってことが大きくなってから焦り始める、という典型的なケースでした。
金額の問題ではなく、どうしてあの時あんなことをしてしまったのか、という後悔は本当に先に立ちません。繰り返しになりますが、身に覚えがある書き込みなのであれば、その行為によって確かに相手を傷つけたわけですから、できるかぎり真摯な対応を行い、誠心誠意謝罪をして、自分自身の過ちを深く反省していただきたいです。
今回は、書き込みをしてしまったらどんなことが起きるのか、という視点で書かせていただきました。書き込みをするときは、「その言葉は本当に発言してもいいものなのか」「自分のことを知っている人に対して、面と向かって言えるようなことなのか」を考え、匿名空間だからと言って、面と向かって言えないようなことをいう事は、控えて欲しいです。
なお、インターネットは、何を見るか、誰とコミュニケーションをとるかを自分で選択することができます。あえてネガティブな書き込みをするために、好ましくない記事や好ましくない人に接触することはやめて、ポジティブな表現をしたいと思えることにだけに接触するようにしてはどうでしょうか? そうすることで、「ある日突然、訴えられるかもしれない」という負い目を感じることもありませんし、ご自身にとってもきっと毎日が幸せになるのではないでしょうか?