はじめに
米国の金利が日本経済にも影響を与える
米国で金利が引き上げられている背景を説明しましたが、なぜそれが日本でも大々的に報じられているのでしょうか。米国の金利が引き上げられたからといって、日本経済に直接影響があるようには感じられないかもしれません。しかし、経済というのは非常に複雑なもので、あらゆる事象が様々な経路を通じて影響を与え合っています。
たとえば、日本と米国の中央銀行が、それぞれどのような金融政策をとっているかを考えてみましょう。日本では10年以上にわたって金融緩和政策がとられています。米国に限らず世界の多くの国がインフレ退治のために金利を引き上げているなか、日本は未だにマイナス金利政策をとっています。普段は経済についてのニュースを見ない人でも、銀行預金につく金利の低さを考えれば、日本の中央銀行は金利を低く維持していることは直ぐに分かるでしょう。
米国の金利が1年半で一気に5%以上引き上げられる一方で、日本は依然として低金利政策をとっていることを考えると、金利が低い円を売って、金利が高いドルを買えば、金利差を収益として得ようとする人が増えて、ドル高・円安が進むことは容易に想像ができます。実際、ドル円相場を見てみると、コロナ前は1ドル=105円前後だった相場は今では1ドル=150円近くまで円安が進んでいます。
このように円安が進行すると、日本では輸出企業が儲かる一方で、海外から原材料を輸入している企業はコストが上昇し減益してしまいます。
株式投資にはどのような影響があるのか?
このようにして、米国の金融政策の変更が為替相場を通じて日本経済に影響を与えるということは理解できたかと思います。それでは、個人投資家にはどのような影響があるのでしょうか? 前述の通り、円安が進行すれば、輸出する企業にとっては業績面で追い風になりそうですし、逆に原材料を輸入している企業にとっては業績面で逆風になりそうです。
また、円安を背景に原材料価格が上昇し、それが価格転嫁されていくと、物価の上昇以上に給料が増えていかない限り、家計は節約をするでしょうから、小売業や飲食店業界は厳しくなりそうです。ただ、円安になれば外国人観光客が増えますから、その観点では小売業や飲食店業界にとってはプラス面もありますし、宿泊や航空業界にとってはプラスといえそうです。
しかし、上記のような考え方は、あくまで一般論に基づくものであり、実際には企業経営者は為替相場に業績や投資計画が左右されないようにするために、為替予約といって予め決まった為替レートで両替できるようにしていたり、生産や販売の拠点を国内だけではなく海外にも設置したりしていますので、各企業が為替相場の変動を受けないようにどのような戦略をとっているかを調べるようにしましょう。