はじめに

私たちの生活への影響は?

前述のように日銀が2022年の12月から長期金利の上限を引き上げるたびに、長期金利の利回りは上限に向けて上昇していきました。今回は「1%をめど」としているため、おそらく早々に日本の長期金利は1%に達し、さらに多少は上振れることになるでしょう。それでは、そうなった時に私たちの生活にはどのような影響が生じるのでしょうか。

いちばん分かりやすいところでいえば住宅ローンの返済負担が高くなるということです。しかし、長期金利の変動は固定金利型の住宅ローンにのみ影響を与えるため、多くの方が選択している変動金利型の住宅ローンには影響はありません。また、事業をしている方にとっては、新規に融資を受けようとする際に返済時に支払う金利の負担は上昇するでしょう。

10月末の金融政策の修正の影響は12月に反映されると考えますが、金融政策決定会合の前からジワジワと長期金利は上昇していたため、すでに11月の住宅ローンの固定金利は上昇しました。

プラス面についても言及すると、メガバンクは定期預金の金利を大幅に引き上げることを決定しました。0.002%だった10年物定期預金の金利は一気に100倍の0.2%に引き上げられています。しかし、物価が1年間で4%ほど上昇していることを考えると、引き上げ幅が100倍という言葉のインパクトほどは影響がないことが分かります。

これから金利上昇の影響が本格化する

植田総裁は9月に大手新聞社のインタビューにて、年末までに物価や賃上げ動向に関するデータが十分に出そろう可能性があるとし、マイナス金利の解除後も物価目標の達成が可能と判断すれば金融緩和の終了も選択肢に入ると語りました。段階的に長期金利が上昇していくなかで、短期金利も上昇していくと考えるのは普通でしょう。

そうなれば、多くの人が選択している住宅ローンの変動金利も上昇していくことになります。ただでさえ賃金上昇が物価上昇に追い付かないなかで節約を進めている家計においては、毎月の支出が増えることは大きな痛手となるでしょう。

もちろん、影響を受けるのは住宅ローンだけではありません。自動車ローン、カードローンなど様々なローンの金利にも影響を与えます。

過度に不安だけを煽っても仕方がありませんので、さいごに安心材料も共有しておきます。仮にマイナス金利が解除されて短期金利が上昇し適用金利が変わっても、5年間は毎月の返済額は変わらない「5年ルール」や、毎月の返済額は従来の1.25倍までしか増えない「125%ルール」があるため、毎月の返済額が金利の上昇に伴い青天井に増えていくということはありません。

多くの民間エコノミストは2024年の4月にマイナス金利が解除されると予想しています。まだ半年近く時間はありますから、住宅ローンを変動金利で組んでいる人や、これから住宅ローンを組もうと考えている人は、契約内容をみなおしてみることをお勧めします。

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