はじめに
金利には「短期金利」と「長期金利」があります。預金や住宅ローンの金利は、短期金利や長期金利の動きに左右されます。その違いはどこにあるのか、経済にどのような影響を及ぼすのかなどについて解説します。まずは短期金利をとり上げます。
インターバンク市場とオープン市場
短期金利と長期金利の違いは、お金の貸し借りの期間です。期間1年未満のお金の貸し借りに適用される金利が「短期金利」、期間1年以上のお金の貸し借りに適用される金利が「長期金利」です。
今回は、短期金利から説明していきましょう。短期金利の代表的な取引は、コール、CD(譲渡性預金証書)、CP(コマーシャルペーパー)、TB(短期国債)などです。コールは銀行間で短期の資金を融通し合う時に適用される金利です。
銀行は日々、さまざまな資金繰りを行っているのですが、日によって資金不足になったり、資金余剰になったりします。資金不足になった銀行は、資金が余っている銀行から1日程度、お金を借りて資金繰りを付けています。この時に適用されるのがコール金利です。そのなかでも、担保なしで1日だけ資金の貸し借りを行うのに適用される「無担保コール翌日物金利」が、短期金融市場における指標的な金利になっています。
一方、CDやCP、TBは、銀行だけでなく一般事業法人もその取引に参加できます。CDは譲渡性預金証書といって、満期までに第三者に譲渡できる預金証書です。CPはコマーシャルペーパーといって、一般事業法人が短期の資金繰りに必要な資金を調達する際に発行します。そしてTBは短期国債といって、国が短期の資金繰りをつけるのに発行する債券です。いずれも期間1年未満の資金を融通するのに発行されます。
なお、コールは銀行間のみの取引なので「インターバンク市場」といわれますが、CDやCP、TBは銀行に加えて一般事業法人などへも広く取引が公開されていることから、「オープン市場」と言われています。
無担保コール翌日物の動きに注目
これら短期金利の中でも、特に重視されるのが無担保コール翌日物金利です。なぜなら、中央銀行である日本銀行が行う金融調節によって、その金利をコントロールできるからです。
そのため、無担保コール翌日物金利は現在、事実上の「政策金利」になっています。政策金利とは、中央銀行が行う金融調節を通じて、金融政策の誘導目標とする金利のことです。
かつて政策金利といえば「公定歩合」でした。公定歩合とは、日銀が民間銀行に資金を貸し出す際に適用される金利のことです。かつて、民間銀行の金利は公定歩合に連動するように規制されていたため、日銀が公定歩合を見直すと、さまざまな金利に影響を及ぼすことができました。
しかし、今から30年近く前に金利が完全に自由化され、かつ1999年から実施されたゼロ金利政策によって、ゼロ金利の誘導目標が無担保コール翌日物金利になったことから、実質的にそれ以降の政策金利は、無担保コール翌日物金利になったのです。ちなみに10月30日時点の無担保コール翌日物金利は▲0.013%です。