はじめに
短期プライムレートを通じて住宅ローン金利に影響
では、政策金利の変動はどのような影響を及ぼすのかを考えてみましょう。
現状、マイナス水準にある無担保コール翌日物金利に関して、日銀がマイナス金利政策を解除したら、どうなるでしょうか。
マイナス金利政策を解除すれば、政策金利には上昇圧力がかかってきます。そして、無担保コール翌日物金利がマイナス圏からプラス圏にシフトし、さらに上昇すれば、CDやCP、TBといったオープン市場における短期金利も上昇します。
こうして短期金融市場で取引されている各種金利の水準が上昇すると、「短期プライムレート」に影響を及ぼします。短期プライムレートとは、銀行が優良企業に期間1年未満の短期資金を貸し出す際に適用している金利のことですが、その金利見直しは銀行による個人向け融資にも影響を及ぼします。具体的にいうと、変動金利型の住宅ローンや教育ローンの金利です。
通常、銀行の変動金利型住宅ローンに適用される基準金利は、短期金利に1%を上乗せした水準で決められます。そこから各種金利優遇措置を受けたものが、個々人の最終的な住宅ローン金利になります。
今のところ住宅ローンの金利上昇はないものの…
現状、長期金利に関しては、イールドカーブ・コントロール(YCC)の見直しが行われたことにより、その変動幅が拡大されました。2022年12月に長期金利の許容上限を0.5%に引き上げた後、2023年7月にはその許容上限を1%にしたのです。
これによって長期金利は上昇傾向をたどり、10年国債利回りは0.844%まで上昇しています。長期金利の上昇にともなって、特に変動金利型住宅ローンを組んでいる人の間からは、「自分が借りている変動金利型住宅ローンの金利が上がらないか心配」という声が聞かれました。でも、今のところその心配はいりません。なぜなら短期金利のマイナス金利は解除されていないからです。
とはいえ、いつかは短期金利のマイナス金利は解除されるでしょう。その時、変動金利型住宅ローンの金利も上昇することになります。そのタイミングがいつかは何ともいえませんが、変動金利型で住宅ローンを組んでいる人は、金利上昇に備える時期が近付いていると考えるべきでしょう。