はじめに
投資のことを忘れるペースで継続することが重要
もうひとつ理由を挙げるとすれば、「メンタル」の問題もあります。一括で購入した場合、買った値段および口数は固定されます。したがって、投資家からすると値段の上がり下がりがどうしても気になってしまいます。
これは購入する際も同様で、一括投資を考える場合、「今日買うべきか?明日買うべきか?」とお札を握りしめたまま迷いに迷って結局行動が起こせないのもありがちです。投資をするべきタイミングを待って、何もしないまま1年、2年と時間ばかり経過するのであれば、1万円ずつでも積立投資を始めてしまった方が、気が付くと100万円に到達しているとなるかもしれません。
積立投資でも、最初のうちはたしかに前回より値段が高かった、安かったと思うかもしれませんが、投資回数が増えればその分「いくらで買ったのか」に対する意識は薄れていくのが自然です。そのうち、毎月の買い付けもルーチン化し、知らないうちに投資信託の購入が進んでいたということになりがちです。
おそらく投資初心者の場合、この状態が望ましい投資の姿ではないかと思います。何しろ資産形成は長期で臨むものです。最初に張り切りすぎて息切れしてはいけません。できるだけ長く、投資のことを忘れたくらいのペースで継続することが重要です。
「ほったらかし」の危険性
忘れたくらいで良いというと、「ほったらかしで良いんですね」と言われますが、それもちょっと違います。市場は変動し続けるのですから、ほったらかしで良いわけはありません。
例えば株に投資をしているのであれば、その企業の決算などまったくチェックしないまま「ほったらかし」はあり得ないでしょう。配当狙いだからとおっしゃる方もいらっしゃいますが、それでもやはり思った通りの配当が継続的に出せる会社なのかどうかは、適時確認しないといけないでしょう。個別銘柄の場合、その会社独自のリスクがあるからこそ、放置はできないといえるでしょう。
一方投資信託の場合は、適時ファンドマネージャーがメンテナンスをしてくれているので、そういう意味では「ほったらかし」も可能です。それでも、運用会社が発行するマンスリーレポートのチェックくらいは投資家として最低限必要なことだと思います。「ほったらかし」は「無関心」ではありません。
つまり巷でよく言われる「ほったらかし」というのは、そのくらいのゆったりした気持ちで投資に取り組んでくださいねという意味と解釈した方がよいでしょう。あまり神経質になって、しょっちゅう株価が気になって夜も眠れないという繊細なメンタルの持ち主は、やはり新NISAが始まるといっても投資は不向きと言わざるを得ないかもしれません。