はじめに

固定金利型住宅ローンの金利は引き上げに

前述したように、短期金利の指標となる無担保コール翌日物金利は、日銀が政策意図を持って、一定の水準に誘導しています。だからこそ「政策金利」なのですが、長期金利は基本的に、債券市場における投資家の需給関係によって、その水準が決まります。本来は自由に動くものなのです。

ところが、前回も触れたように、日銀は2016年9月からYCC(イールドカーブ・コントロール)を導入して、長期金利も誘導対象にしました。長期金利が誘導目標を超えて上昇しそうになった時は、日銀が長期国債を買い入れて、長期金利の上昇を抑えるという金融緩和政策を行ったのです。

そして現在、日銀はYCCの変動幅を拡大し、許容上限を引き上げています。当初、0%としていた変動上限を、1%超えも容認するようになりました。ここ直近、長期金利が上昇傾向をたどっていたのは、こういう事情があったからです。

長期金利が上昇すると、住宅ローンにどのような影響が生じるのでしょうか。実は変動金利型住宅ローンに関しては、短期金利を指標にして決めているので、現状、マイナス金利を継続している段階では、変動金利型住宅ローンの金利は上昇しませんし、YCC見直しの影響も受けません。

ただ、固定金利型住宅ローンは長期金利を指標にしているため、YCCの見直しと、長期金利の上昇による影響は不可避です。実際、大手銀行は年明け1月から10年固定金利型住宅ローンの金利引き上げを発表しました。

金利上昇局面の借入は固定金利型が有利

ただ、これは固定金利型の良さなのですが、基本的に固定金利型は決められた借入期間中にどれだけ長期金利が上昇したとしても、借入金利は上昇しません。だから固定金利なのです。

もちろん、新たに借り入れる場合は、新規融資の利率が上昇しますが、すでに固定金利で借りている場合は、借入期間が終わるまで、借り入れた時の融資利率が継続するのです。

したがって今後、金利上昇が見込まれる時には、固定金利型住宅ローンで借り入れた方が、その後、金利が上昇しても返済額は増えずに済みます。特に住宅ローンのように、総額が大きな借入を行う場合、0.1%の金利上昇でもトータルの返済額は大きく変わってくるので、注意が必要です。

逆に、金利が低下していく局面では、変動金利型住宅ローンの方が、金利低下と共に返済額が減るというメリットを享受できます。

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