はじめに

資産運用で暮らすには、何%必要か

10億円当たっても、まったく働かないで資金をただ取り崩すだけの使い方だと、決して贅沢はできないことがわかりました。10億円もあるのに、と思うとちょっと残念な気持ちです。

せっかく10億円もあるなら、資産運用で増やしながら使えばいいのではないか、と考えるのも必然です。資産運用の収入だけで暮らすには、年利は何%必要なのでしょうか。

●定期預金の金利0.002%なら毎年2万円
幸運に恵まれて当たった10億円です。金融機関に預けるなら絶対に元本保証、と考えるのも無理はありませんが、定期預金の金利は現在0.002%(2023年12月現在)。これでは1年預けてもほんの2万円です。20.315%の税金を差し引かれたら、通帳には1万8000円しか入金されない計算です。

これでは、元本を減らさずに金利収入だけで暮らすのは難しいことがわかります。万が一、金融機関が破たんした場合に、一定額の預金を保護するための保険制度である「預金保険制度」は、元本1000万円までが対象です。

つまり、万が一の場合でも預金は全額保護して欲しい、となったら、1000万円ずつ100の金融機関に分けなくてはなりません。手間がかかるうえに利益は小さいので、あまり現実的な方法とはいえません。

●年利0.5%の運用なら毎年500万円
とはいえ、やはり元本割れは避けたいなら、個人向け国債という選択肢もあるでしょう。個人向け国債は、国が元本割れなしを約束しており、さらに金利の下限が0.05%に設定されているため、金利の動向に一喜一憂しなくて済みます。

国債には、変動10年、固定5年、固定3年の3種類ありますが、金利の上昇傾向の今は、変動10年がいいでしょう。変動10年の利率は、半年ごとに実勢金利に応じて見直されます。

2023年現在で見てみると、変動10年の国債の適用金利は0.5%前後で推移しています。利払いは半年後ですから、元本10億円なら250万円になります。1年で500万円の収入です。ただし、税金を差し引くと、約400万円が受け取り金額。月あたり約33万円になります。

なお、働かなくても国民健康保険や国民年金保険といった社会保険料は払わなくてはなりません。10億円の元本を減らさずに金利収入だけで暮らすとなると、決して豊かな暮らしはできないと言わざるをえません。

もし、金利の下限になってしまったら、半年後の利子は25万円。税引き後は約20万円です。この金額以下になることはないとはいえ、1カ月あたり約3万3000円ですから、国債以外の方法も組み合わせたほうがよいでしょう。

基本的な生活費はこれまでどおりの仕事で稼いで、レジャーや趣味、大きな買物には金利収入を充てる、というスタイルにすれば、これまでの暮らしともかけ離れることなく、気持ちに余裕がもてそうです。金利収入も見込めるなら、やりたい仕事をやりたいペースで続けていけるのではないでしょうか。

●年利3%の運用なら、毎年3000万円の利益
豊かな暮らしを実現できるような収入を資産運用で目指すなら、やはりある程度のリスクを取ることになります。

投資信託や株式などでの資産運用は、始めたばかりの頃は失敗もそれなりに経験します。その場合、比較的ローリスクの運用であれば、損失もそれほど大きくならずにすみますので、まずは大きな利益を狙わずに、地道な運用を続けていくといいでしょう。

投資信託による運用で、年利3%を目指すのであれば、それほどハイリスクではありません。元本10億円であれば、毎年3000万円になります。税金を差し引いても2400万円ですから、運用のしがい、お金の使いがいがありますね。

1年で2400万円は、月当たり200万円です。家賃30万円のマンションに住み、食費は月20万円、洋服に10万円、美容などセルフケアに20万円、光熱水道代や携帯電話料金はこれまでと大きく変わらないと思いますので、普段の暮らしには月100万円で十分かもしれませんね。そのうえ、旅行やレジャー、趣味にもお金を使えます。

とはいえ、運用には利益と損失の浮き沈みがあります。損失が出た時の備えも必要です。一喜一憂せずに淡々と運用できる範囲、つまり自分が許容できる範囲を見極めて、着実に利益を出せるようにしていきます。

ここまでくれば、資産運用が仕事の一部ともなります。自分で資産の収支をコントロールして、増やしながら使える状態と言えるのではないでしょうか。

●あえての「毎月分配型」「隔月分配型」投資信託
10億円当たっても、そのお金をコントロールできる人ばかりではありません。幸運の波が来ていると錯覚して、ハイリスクの投資をしたり、無茶な企業をしたりして、10億円を数年で使い切ってしまう人もいます。

少しずつ取り崩して使おうと思っても、残高が何億円もあると、つい財布のヒモもゆるくなるのも仕方のないことかもしれません。そういう場合は、あえて「毎月分配型」「隔月分配型」投資信託を利用する手もあります。

毎月分配型の投資信託は1カ月ごと、隔月分配型は2カ月ごとに決算を行い、収益などの一部を分配金として、決算時に分配する運用方針です。ですから、運用を続けて、運用成果を分配金として定期的に受け取りたいというニーズに合っています。

ただし、分配金は、分配金の支払いや分配金額が保証されてはいません。また、運用成果が出なかった時には、元本が取り崩されることにも注意が必要です。

分配型投資信託は、比較的お金持ちで高齢の方が年金の足しに利用されているケースが多いイメージです。元本を単に取り崩すよりは、投資による資産運用を組み合わせているぶん、資産の減るスピードがゆるやかになることが、ニーズに合っているのでしょう。

投資による資産運用を積極的に考える方には、敬遠されがちな分配型の投資信託ですが、場合によっては使える投資方法であると言えます。

投資信託や株式による資産運用をするなら、2024年から開始の新NISA制度はしっかり活用しましょう。NISAは、運用による利益が非課税になる、個人投資家向けの制度です。新NISAでは無期限になり、年間の投資枠も大きくなりました。年間投資枠は、つみたて投資枠で120万円、成長投資枠で240万円。合計で360万円です。

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