はじめに
“イングランド銀行を潰した男”ジョージ・ソロス氏
数々の伝説を残した投資家です。前述のジム・ロジャーズ氏と1973年から運用を開始したクォンタム・ファンドが10年間で40倍以上に価格上昇したとされています。多額のポンドの空売りを仕掛けて利益を出した一方で、英国中央銀行は通貨防衛策をとったもののポンド危機に陥ってしまったことで、“イングランド銀行を潰した男”との異名も。1930年生まれ、ユダヤ人としての壮絶な経験をされた方でもあります。
頭がよりクリアな朝に重大な決断をするべきだという信念をもち、大きな投資の決断などは朝に行ったとも言われています。そんなソロス氏は少子高齢化の問題などから日本の将来については悲観的です。
ジョージ・ソロス氏の投資手法は“再帰性理論”を基盤としています。この理論には以下の要点が含まれています。
1.予想と現実の相互作用
ソロス氏は、人々の意思決定が予想に基づいて行われる一方で、その意思決定が現実を変化させ、新たな予想を生むという循環的なプロセスが存在すると主張しています。このため、予想と現実は常に予測不能であり、不確実性が存在すると考えています。
2.市場の歪み
ソロス氏は市場における価格は、投資家たちの主観的な予想によって形成され、その予想は常に不完全であると認識しています。市場の歪みは、予想と現実の相互作用によって生じ、これにより市場価格は時折、実際の価値から逸脱することがあります。
3.投資家のアクションと市場への影響
投資家たちの行動や取引が市場に影響を与え、市場の動向をさらに不確実にする要因となります。ソロス氏は、市場の歪みを認識し、それに対して適切な行動をとることで、利益を上げる機会があると信じています。
ソロス氏は、イギリスのポンド危機などの歴史的な事例を通じて、市場の歪みが発生した場合に、その特性に合わせた投資行動を通じて成功を収めています。市場が不完全であること、投資家の予測が常に正確でないことを理解し、その歪みを利用して市場の動向を予測することが大きな利益を上げることにつながるようです。
日米間の為替相場と通貨供給量の比率に相関があるとして日米の中央銀行の通貨供給量を比較した “ソロスチャート”というものもありますので、気になる方は調べてみてください。
ソロス氏は2011年にファンドの運用からは引退。市場の再帰性など、思想を伝えたり慈善活動もされています。