はじめに
引き出したお金の次の行く先
企業型DCあるいはiDeCoの資金をすぐにそのまま老後の生活費に充てる方もいるでしょう。その場合、引き出した資金はそのまま銀行の定期預金あるいは個人向け国債をオススメすることも多いです。数年の間に使うお金であれば、投資には向かないからです。
十数年後に起こるかも知れない認知症への備えや介護または配偶者が亡くなった後の施設入居費用にしたい場合は、保険に充てる場合もあります。
例えば、認知症になってしまうと、自分のお金を自由に使えなくなってしまいます。いわゆる「凍結」です。もちろん後見人をつけるなど対策もありますが、そういう時に保険の代理人請求を利用するとスムーズに資金を引き出し、その後の生活費や介護費用に充てることも可能です。
あるいはご自身が亡くなったあとに遺された配偶者がそのお金で老人施設に入るということであれば、終身の死亡保険にすることもできます。また死亡保険であれば相続時に別途控除が認められますので、相続税の納税資金対策としての活用も考えられます。
積極的に運用を行いたいということであれば、DC資金をNISAに移していくこともできます。NISAはDCと異なり、投資信託の売却はそのままNISA口座からの資金の引出となります。そのため、仮にどこかのタイミングで一括で引き出したいという場合も、DCのようにスイッチングができません。その点を考慮すると、NISAで運用すべき投資信託はバランスファンドのような商品の方が扱い易いのではと考えます。
定年退職後もなおつみたて投資が継続できる方だけではないでしょうから、今回は55歳から65歳までNISAでつみたてて10年間の運用期間を経て、取り崩すパターンを考えてみます。
例えば、世界中の株式に投資をするような投資信託もある意味世界の株式市場の状態に合わせて割合が変化するバランスファンドと言えます。このような商品を1本選んでみたとしましょう。
恐らく債券などが含まれていない投資信託なので、資産額の変動はそれなりにあると思います。それを考えると、10年つみたてた資金を75歳から「お小遣い」のように引き出していくのが良いのではないでしょうか。
お小遣いですから、その月にマーケットが良ければ普段よりちょっと引き出せる金額も大きくなり優雅な1ヶ月が過ごせるでしょう。逆にマーケットが悪ければ、節約の1ヶ月です。でもそもそもお小遣いであれば、楽しみを増やしたり減らしたりできるわけですから、気持ちにゆとりをもって投資と向き合えるのではないでしょうか?
取り崩しについては、今後金融機関がどんどん便利なツールを開発してくるでしょうから、あまり面倒に思う必要はないと思います。つみたてをする際は「定時定額」が効率よい方法と言われていますが、取り崩しの際は「定時定率」の方が効率的だと良いと言われています。すると75歳から5%ずつ取り崩す設定をすると、20年くらいで取り崩しが終了するイメージです。実際には、引出後の資金は運用されていきますので、ある程度の運用利回りが継続すると20年以上お金が残る計算です。
お小遣いではなく、生活資金にということであれば、選ぶべき投資信託は株と債券、そして日本と外国といった基本の4資産に投資をする均等バランスのような投資信託の方がふさわしいかも知れません。
先ほどNISAはスイッチングできませんと申し上げましたが、新NISAは枠の再利用ができるので、やろうと思えばスイッチング的なことは可能です。例えば若い方であれば、途中で住宅購入のためにまとまった資金を解約して、新たなつみたての際は投資商品を変えて次のステージのリスクに備えるといった方法です。
ただ枠を再利用できるのは翌年以降であることなどを考えると、引出をする際には、毎月少しずつ取り崩していくと最初から決めておいた方が良いのではないかと思います。
今回は老後を見越した投資との付き合い方をお伝えしましたが、これもほんの一例に過ぎません。十人十色、投資も個人個人により目的が異なります。これからの投資方法については、一度専門家とお話をしてみることで視野が広がることもあるでしょう。参考にしていただけましたら幸いです。
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