はじめに

退職後の健康保険は3つの選択肢がある

さて、Aさんは大学卒業後に入社した会社で35年間働き続けていましたが、退職後の予定は今のところ未定です。再就職は視野に入っているものの、いわゆる失業保険を受け取りながら仕事を探されるとのことでした。これらのお話を伺い、健康保険については、以下の3択から判断することをお伝えしました。

1. 今までの健康保険に引き続き加入する
正確には「任意継続制度」を利用することになります。退職時に手続きを行うことで、退職後2年間に限り加入することができます。扶養に入っていた家族も加入できること、在職時とほぼ同じ内容の給付や保健事業サービスを受けることができます。

例えば、健康診断費用の補助や会員制リゾート施設の利用など、勤務先の福利厚生サービスの内容と充実度をチェックしておくと良いでしょう。ただし、保険料は会社との折半から全額自己負担となるため注意が必要です。さらに保険料の計算方法は加入先の制度により異なります。試算して他の選択肢と比較することはマストです。

2. 国民健康保険に加入する
保険料の算出方法は住んでいる市区町村ごとに異なります。前年度の所得をもとに計算しますが、自分でしなくても自治体の担当部署へ問い合わせをすると試算してもらえるので確実です。

給与のみの時は源泉徴収票を、給与以外の所得がある時は確定申告書を手元に用意しておくとスムーズに話を進められるので、あらかじめ準備しておきましょう。

なお、国民健康保険には扶養という概念はないため、世帯人数が増えると、その分保険料は高くなります。

3. 家族の被扶養者になり、家族の健康保険に加入する
保険料の自己負担がないため、真っ先に検討しておきたい選択肢ですが、ハードルは高いかもしれません。

というのも、被扶養者に該当するには要件があり、Aさんは60歳以上なので年収180万円未満であること、かつ、扶養者である家族の収入の半分未満と決められています。失業保険は非課税ですが、健康保険の扶養判定の収入に含まれるため、要件から外れてしまう可能性が非常に高いのです。

以上をお伝えしたところ、家族の健康保険への加入は難しいため、「任意継続制度」と「国民健康保険」に加入した場合の保険料を比較しました。

・「任意継続制度」の場合
Aさんは勤務先の健康保険組合に加入しており、退職後は在職時の保険料(会社負担分を含む)、もしくは健康保険組合の平均保険料のどちらか低いほうが適用となります。比べたところ健康保険組合の平均保険料の方が低く、年間91万円ほどです。

・「国民健康保険」の場合
自治体に電話で確認したところ、世帯にかかる保険料は上限の104万円(年額)になることがわかりました。

比較すると、任意継続制度の方が年間で13万円ほど安くなりますが、それでも月7万5,800円ほど。退職した翌年は、健康保険料の負担が重いことがわかります。

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