はじめに

インデックスファンドを中心にした信託報酬の引き下げ競争がもたらすものは、何でしょうか。ローコストは確かに受益者にとって正義ですが、一方、運用で収益を稼いでいる投資信託会社にとっては、売上減に直結する問題でもあります。


信託報酬のしくみ

恐らく、マネープラス読者には釈迦に説法かも知れませんが、ひょっとしたらNISAの非課税枠が拡大したことを機に、初めて投資信託を買おうという人もいるかも知れませんので、改めて投資信託会社がどこで収益を稼いでいるのかについて、説明したいと思います。

投資信託を購入した人は、大きく2つのコストを負担しています。購入時手数料と信託報酬です。

このうち購入時手数料は、証券会社や銀行など販売窓口となる金融機関に対して支払うコストなので、投資信託会社は1円もここから収入を得ることはできません。投資信託会社が得る収益源は、信託報酬のみです。

購入時手数料は、投資信託を購入した金額に対して一定率が課せられます。たとえば購入時手数料が2%で、購入金額が100万円だとしたら、2万円が差し引かれて、これが販売金融機関の収益になります。

次に信託報酬ですが、これはファンドの純資産残高に対して一定率が日々、差し引かれていきます。

たとえば純資産残高が100億円のファンドがあり、年率1%の信託報酬で、純資産残高が1年間不変だったとすると、このファンドの信託報酬は年間で1億円です。もちろん現実には純資産残高が日々、増減するので一概にはいえませんが、仮にそうだとします。

信託報酬は全額、投資信託会社の収益になりません。投資信託会社と、ファンドの資産を管理する信託銀行、そして販売金融機関の3者で分け合うことになります。したがって、仮に全体の信託報酬率が年1%だとしても、実際に投資信託会社に入るのは0.4%程度だったりします。純資産が1年を通じて100億円だとしても、投資信託会社に入る収益は4000万円だということです。

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