はじめに
信託報酬の引き下げ競争がもたらすこと
近年、インデックスファンドを中心にして信託報酬率の引き下げ競争が激化しています。
確かに、受益者側から見れば、運用コストは安いに越したことはありません。が、投資信託会社も営利企業ですから、信託報酬率を下げれば、それだけ売上は減ります。
たとえば「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」の信託報酬率は年0.05775%(税込み)ですが、投資信託会社に入るのは、このうち0.0175%(税抜き)です。現在、同ファンドは3兆4398億円の純資産を持っているので、それでも年間6億円の信託報酬が入ってきますが、3兆円もの残高があっても、売上に計上できるのはたったの6億円なのです。
同ファンドはオール・カントリーに連動するインデックスファンドとして、唯一の勝ち組といっても良いのですが、他の同じインデックスに連動するタイプのファンドには、純資産残高が1400億円程度で、投資信託会社の信託報酬率が年0.0187%というものもあります。これだと年間の収益は2620万円にしかなりません。
もちろん、他のファンドで高い信託報酬率を設定して、会社全体として売上が立つならそれでも良いという解釈かも知れませんが、1400億円もの資金を集めたファンドで、投資信託会社の売上が2620万円では、個別ファンドベースで考えれば、収益は赤字でしょう。
恐らく、このインデックスファンドブームの行き着くところは、ウィナー・テイク・オールになるはずです。つまり勝者総取りです。正直、同じ指数に連動するインデックスファンドが、多数の投資信託会社で運用される必要はありませんから、資金の集まらないファンドは自然淘汰され、特定社のインデックスファンドに集約されていくと考えられます。
運用の継続性を重視
このように、勝者総取りの状況になり、資金があまり集まらないのにも関わらず、信託報酬の引き下げ競争に巻き込まれたインデックスファンドは、繰上償還という形で自然淘汰されるでしょう。
そうなった時、結局、損をするのは受益者です。繰上償還されれば、これまで投資してきた資金が全額現金化されてしまいますから、コツコツと積立投資してきた受益者からすれば、それまでの努力が無駄になってしまいます。
特に、NISAのつみたて投資枠で投資している人たちは、運用の継続性という点をシビアに考える必要があります。ようやくの想いで1000万円くらいまで積み立ててきたのに、いきなり繰上償還されてしまったら、また毎年120万円ずつ積み立てていかなければなりません。今まで資産を積み立てるのに要した時間が、無駄になってしまうだけでなく、1800万円を全額、非課税運用できる時間も短くなってしまいます。
現在、つみたて投資枠で購入できるファンドは、多くがインデックスファンドに偏っていますが、それを選ぶに際しては、運用の継続性という観点を重視することが肝心なのです。
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