はじめに

前回、インデックスファンドで激化している信託報酬率の引き下げ競争と、運用の継続性について解説しました。それは同時に、投資信託会社の経営の持続性にも影響を及ぼします。

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小さな投資信託会社は経営の持続性に要注意

前回、インデックスファンドの信託報酬率の引き下げ競争が激化するなかで、恐らく「ウィナー・テイク・オール」、つまり勝者総取りになるだろうという話をしました。

実際、全世界株式インデックスファンドについていえば、信託報酬率が年0.05775%という極めて低廉な水準を実現している「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」に資金が集中する状況になっています。

結果、他社の同一指数に連動することを目指したインデックスファンドには資金が集まりにくくなり、いずれ繰上償還を余儀なくされるかも知れないという話でした。

似たようなことは、実は投資信託会社にも当てはまります。

近年は、個人向け投資信託業務と、年金など機関投資家運用業務を併営している運用会社が、特に大手の場合は多いので、その手の運用会社は運用資金の額も大きく、それだけ経営が安定しやすいともいえるのですが、個人向けの投資信託業務しか行っていない、運用資産規模の小さな投資信託会社の場合、経営の持続性という点を、しっかり見極める必要があります。

廃業となった投資信託会社の例

これは経営破綻ではありませんが、過去において廃業した投資信託会社がありました。「ムーンライトキャピタル株式会社」がそれです。

同社は「ムーンライト・エイドスファンド」と「ムーンライト・エイドスミニ・ファンド」という2本の追加型株式投資信託を設定・運用していました。

前者の設定は2010年2月2日、後者は2010年4月27日に設定されたのですが、2012年2月10日付で、金融庁長官から登録取り消し処分を受けることになったのです。

実は同社が登録取り消し処分を受ける前、金融庁は2度にわたって業務改善命令などを出しています。その理由は、ムーンライトキャピタルの純資産が当時、投資運用業を行うのに必要とされる5000万円の最低基準を満たしていなかったからです。

それに加え、2012年2月10日に金融庁が発表した資料によると、

①税金などが未払いになっていた。
②収益に比べて人件費などの費用が恒常的に過大な状況となっていた。
③運用資産残高が2010年9月末の10.2億円から、2011年9月末には3.9億円まで減少していた。

以上の状況が確認され、投資運用業の継続が困難と判断され、登録取消しの行政処分が行われたのです。そして運用していた2本のファンドは繰上償還となりました。

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