はじめに

老後資金の対策としてiDeCoを検討

老後資金の準備費用として、毎月8万円を確保できましたが、貯め方は貯金だけで十分なのでしょうか。

最近の物価高や円安のニュースもあり、Aさんも円の目減りについては気になっていましたが、今まで投資の経験がないため元本割れの不安があり、一歩を踏み出せずにいました。

物価が上がると、これまで1,000円で買えていたものが、数年後には1,100円を出さないと買えなくなる可能性もあります。そうなると、貯金だけでは、実質的にはお金が減ってしまうことになります。

そこで今回FPへ相談したことをきっかけに、投資についても真剣に検討してみることにしました。

Aさんの様に会社員で額面の年収が600万円程度の方は、老後の資金作りに私的年金制度であるiDeCoの活用を検討してみましょう。資産運用というと新NISAが思い浮かぶ方も多いかもしれませんが、iDeCoには新NISAにはない税制優遇があります。会社員は現役時代の税金をいかにコントロールできるかが老後資金を準備する時のポイントになります。

iDeCoではあらかじめ決められた金融商品のなかから、自分で商品を選びます。商品のなかには元本割れのリスクがあるものもあります。また、一度加入すると60歳まで引き出すことができません。ただし、前述した通りiDeCoには毎月の掛金が全額所得控除の対象になるなど、税制面で大きな優遇が受けられるメリットがあります。掛金の最低月額は5,000円からですが、働き方や勤務先が導入している年金制度によって、そもそもiDeCoを活用できるのか、活用できる場合でも掛金の上限額が異なります。

FPから話を聞き、メリットを感じたAさんは、勤務先にiDeCoへの加入が問題ないことを確認して、早速iDeCoを始めることにしました。今後、年利3%で60歳まで毎月10,000円を積み立てたとします。すると、61歳から90歳までの間、毎月1万2,096円を受け取ることができます(年利1.5%で運用)。あわせて、掛金を拠出している間は所得控除の対象となるため、年間12万円が課税所得から差し引かれます。Aさんの場合、60歳まで住民税・所得税あわせて年2.4万円の節税効果が続きます(所得税率の変更等により、節税額は変わる可能性があります)。

老後への備えは目標を具体的にすることから

Aさんは毎月の貯蓄額を8万円に増額し、iDeCoの活用も始めることになりました。その結果、Aさんが理想とするゆとりある老後の生活を90歳まで問題なく続けられるシミュレーションとなりました。

Aさんはまとまった貯蓄もあり、将来的には確定給付型の退職金も受け取れることを考えると、一見、老後の生活に心配ないように思えるかもしれません。しかし、実際に試算してみると、Aさんが希望するゆとりある生活を送るには老後に向けたさらなる準備が必要なことがわかりました。「老後の生活」といっても、それにかかる費用は人それぞれです。ご自身が思う「老後の生活」にどれくらいのお金がかかるのかを明確にすることが必要です。

理想とする老後の暮らしを実現するために、できるだけ早い段階から具体的に必要な額を把握し、行動に移していきましょう。

【監修】伊達有希子/ファイナンシャルプランナー(CFP、1級FP技能士)

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