はじめに

新NISAのスタートで、ますます株主優待に注目が集まっています。

株主優待とは、企業が一定数の株式を保有する株主に対して、自社商品やサービス、割引券などを提供することで、株主に対して感謝の意を示すとともに、長期的な株式保有を促進する目的で行われています。じつは株主優待制度は、日本独特のもので、たとえばアメリカ株で株主優待がつくことはありません。


サイゼリヤ優待廃止の理由とは

日本の上場企業約3,800社のうち1,500社程度が株主優待制度を実施しており、全体の約40%程度にあたります。冒頭でも述べましたが、新NISAで個人投資家を取り込む施作として優待をあらたに創設する企業は、増加傾向にあります。

ところがこの流れに逆行して、先日7月10日(水)に、サイゼリヤが2024年8月期第3四半期決算発表のタイミングで、株主優待の廃止を行いました。サイゼリヤの優待内容は、100株以上で500円の食事券4枚、500株以上で20枚、1,000株以上で40枚(いずれも1年以上継続保有の株主のみ)です。会社四季報オンラインによると、株主総数54,848名中、単元株主数49,517名と個人投資家の比率が高いことが窺われますので、優待目的で保有していた人も多かったことでしょう。

優待廃止の理由は「株主の皆様への公平な利益還元のあり方という観点から、配当による利益還元に集約することが適切であると判断し」とあります。当社の場合、サイゼリヤの食事券が優待品なので、近くに店舗がないと利用できません。たとえば海外投資家が受け取ったとしても、使う術がなく、無駄になってしまいます。そういった不公平をなくすために、優待での還元を廃止し、その分を配当金として還元するということです。

ちなみに年間配当金は、当初の発表予想18円から25円に引き上げられています。株主優待に充てる引当金は5月末で約2億5,000万円で、配当の引き上げ金はこれを上回る金額になりますから、実質的には株主還元が拡充したことになります。

ところがこの発表があった翌日、サイゼリヤの株価は一時8.69%安の5,250円まで下落。その後は買い戻され、-2.3%安の5,620円まで戻りましたが、優待廃止のショックは大きかったようです。

画像:サイゼリヤ「2024年8月期 第3四半期決算短信〔日本基準〕(連結)

業績はどうかというと、①売上高163,270(百万円)、②前年比23.6%、③営業利益10,065(百万円)、④前年比182%と決して悪くありません。営業利益の通期予想13,100(百万円)に対する進捗率も、76.8%と順調です。

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