はじめに

ライフプランでゴールを決める

Aさんに現状確認とともに、今後の働き方、老後生活において優先させたいことなどのヒアリングを行いました。

老後生活において優先したいこととして、生活レベルの維持、年1回の旅行、趣味の活動を続けることを挙げられました。その上で、老後資金が足りるようであれば60歳で退職し、仕事のペースを落としてパートなどで働くことも考えているそうです。

ヒアリングを行った内容を元に、60歳で退職し、65歳まで現在の収入の4割程度の水準で働く場合のライフプランを作成したところ、70歳で貯蓄が底をつき、老後資金が不足することがわかりました。

そこでAさんは、現在の職場で65歳まで継続雇用制度を利用して働くことを決めました。60歳以降は雇用条件が変わるため、給与水準は現状の約7割に低下するものの、働く期間を5年延長すると、資産寿命を81歳まで延ばすことができます。それでもAさんの希望する老後生活を叶えるには、なお老後資金が不足しているため、対策が必要です。

目標を叶えるには「無理なくできる金額」よりも「やるべき金額」に目を向ける

Aさん自身もお考えのように、必要な老後資金を準備するためには、NISA等を活用した資産形成が欠かせません。

どのような対策を行うか検討を進める上で、Aさんが自身の考えをお話しされました。

「手元にある預金600万円のうち、半分の300万円を原資にNISAで運用しようと思っています。月5万円を積立すれば年間60万円、5年分になります。資産運用は初めてだし、それくらいのペースならできそうかな。5年後にはまた運用に回した額と同じくらいは貯金もできていると思うから、そのタイミングでまたどうしていくか考えるつもりです」

Aさんがお考えのプランで運用した場合(月5万円を5年間積立)、3%/年での運用を想定してシミュレーションを行うと、赤字に転落するタイミングは86歳に延びますが、それだけでは老後資金の不足額を補いきれないことがわかりました。

初めて資産運用を行うAさんにとって、NISAを活用して積立投資を行うのは適した選択だと言えるでしょう。運用利益が非課税となることで投資効率が上がるうえ、積立投資は投資のリスクを減らす分散投資が可能だからです。しかしながら、Aさんが希望する老後生活を叶えるには、投資の「期間」と「金額」の再検討が必要でした。

複利の恩恵を受けるには投資期間と金額を適切に

すでに手元にまとまった資金がある場合、早めに成長性が期待できる資産に移した方が「複利」の恩恵を受けやすくなります。複利は、運用で得た利益を元本にプラスした合計額に対して利子がつきます。

たとえばNISAやiDeCo(個人型確定拠出年金)を利用して投資信託を購入する際に再投資型を選択すると、運用益や分配金を受け取らずに元本に含めて投資をするため、効率よく資産を増やせるのが複利の効果です。複利の場合、運用期間が長くなるほど発生する利益は大きくなります。

一括投資の方がまとまった金額で運用期間を長く取れることから、積立よりも利益が増える可能性があります。ただし、一括投資を行った時点よりも価格が上がれば利益は増えますが、タイミングによっては購入後に価格が下がり、損失を抱える可能性もあります。投資初心者にとって一括投資を行うタイミングを選択することは簡単ではありません。

積立投資の場合、資金が積立に回るまでの間預金に置いたままになることで利益を生む機会の損失に繋がる可能性はありますが、購入タイミングを分散することでリスクを軽減できるため、投資初心者に適した方法です。

ただし、預金のまま置いておくことはインフレリスクもありますので、適切な期間と金額で積立投資を進めることが必要です。

また、定年後に収入が下がる場合、月々入ってくるお金から投資に回せる金額も減り、手元資金を使うことへの不安感も増すのではないでしょうか。定年前の収入レベルが維持されている期間にまとまった額を運用し、投資の土台をつくっておくことが、運用効果の面でも、心理的負担の面でも有効です。

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