はじめに
安心の老後生活を実現するための対策
新しいことに取り組むときには「できる金額」からはじめがちです。けれども、負担なくできることを重視するあまり、目標が達成できなくなることは避けたいはずです。
希望の老後生活を実現するためには、「できる金額」ではなく「やるべき金額」を知り、必要な対策を進めることが欠かせません。
Aさんのケースでも、ライフプランを元に必要となる対策を検討しました。
Aさんは65歳まで現在の会社で働くと決めたため、税負担の軽減効果も得られるiDeCoの利用を提案しました。企業型確定拠出年金制度がない企業にお勤めであったため、定年退職までは掛金の拠出上限額である23,000円/月を拠出することになりました。
iDeCoの利用だけでは目標とする老後資金には不足するため、さらにNISAを利用して積立金額を上乗せします。
当初2年間は月20万円を積立し、年間240万円のペースで投資します。つみたて投資枠(年間投資枠:120万円)で月10万円、残りを成長投資枠(年間投資枠:240万円)で月10万円の積立を行うことを提案しました。
成長投資枠では一括投資や、つみたて投資枠では対象外の株式などへの投資も可能ですが、つみたて投資枠と同じ商品を選択して積立をすることも可能です。2年が経過した後、60歳から65歳で退職するまでは、つみたて投資枠で月3万円の積立を継続することになりました。
つみたて投資枠、成長投資枠のいずれも3%/年で運用できたと想定した場合、90歳時点までキャッシュフローが赤字に転落することなく、希望の老後生活を送ることが可能となるシミュレーション結果となりました。
意外と短い老後資金準備ができる期間
定年の節目となる60歳が近づいてくると、自身の老後の生活や老後資金について、より実感を持って意識するようになってくるのではないでしょうか。
定年やリタイアまであと数年という方は、老後資金を貯めるための期間は思ったよりも長くありません。
何歳まで働くのか、定年前後の給与条件はどう変化するのかによって、老後資金準備にかけられる期間や必要な金額も変わります。まずは、自身の働き方や理想の老後の暮らし方を具体化しましょう。そのためにも、ライフプランを作り、現状把握をして老後生活のシミュレーションをすることが欠かせません。
シミュレーションの結果、目標達成には対策が必要と判明したら、ゆっくりと対策を進める時間はありません。
「自分にできる範囲で無理なく進めていきたい」と思う気持ちもわかりますが、ご自身が理想とする老後生活の実現のためには「できる範囲」を広げることも必要です。目標実現のために適切な運用期間と金額で対策を進めることで、安心の老後生活を実現しましょう。
【監修】伊達有希子/ファイナンシャルプランナー(CFP、1級FP技能士)
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