はじめに

とあるWEB記事で、旅行に便利な100均グッズ特集を見かけ、「なるほど、これは便利」とさっそく最寄り駅の近くにあるセリアに行ってみたところ、想像以上に人が多く驚きました。

投資家目線で見ると、これだけ物価が上昇する中、100円を維持するのは相当厳しく、利益率の低下が危惧されます。一方、消費者目線で見ると、「何もかもが値上げする中、100円で買えるなんてなんとありがたい!」と、まったく真逆の評価になります。

ただ、最近は、原材料の価格に大きく影響する為替が、いっときの1ドル160円台から140円ぎりぎりのラインまでドル安円高となっています。これは、今まで苦しんできた百均ストアにとっては、かなり追い風となります。となれば、今後の株価上昇も期待できるかもしれません。

そこで、上場している百均企業3社(セリア、キャンドゥ、ワッツ)の株をこれから買うとしたら、どこが有望か考えてみましょう。


売上規模も営業利益率もずば抜けている「セリア」

百均の市場希望ですが、緩やかに右肩上がりを続けており、2023年度には1兆円を突破しました。コロナ禍の巣篭もり需要と、物価上昇による消費者の節約志向が、市場規模拡大に寄与しています。

では、3社それぞれの売上と利益を比較してみましょう。

一目瞭然、売上規模も営業利益率もずば抜けてセリアが優秀です。じつは、ほか百均企業が、200円、300円といった、高単価商品を強化する中、セリアだけは、100円を死守。それでも営業利益率6%台を維持しているのは驚異的です。

セリアの営業利益率がほか2社に比べて高い理由は、売上総利益率(粗利)の高さにあります。つまり原価率が低いということです。

実際に直近の損益計算書で確認してみます。

セリアの原価率
①売上原価34,174(百万円)÷②売上高58,115(百万円)×100= 58.8%

画像:セリア「2025年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(非連結)

キャンドゥの原価率
①売上原価13,074(百万円)÷②売上高20,920(百万円)×100= 62.4%

画像:キャンドゥ「2025年2月期 第1四半期決算短信[日本基準](連結)

ワッツの原価率
①売上原価28,062(百万円)÷②売上高45,604(百万円)×100= 61.5%

画像:ワッツ「2024年8月期 第3四半期決算短信〔日本基準〕(連結)

セリアの原価率は、ほか2社より3%以上、低いことがわかります。たった3%と感じるかもしれませんが、販売価格が100円と安い百均ショップにとっては、その差は大きな違いです。

セリアの原価率が低い理由は、商品のラインナップを見れば分かります。

ひとつめの理由は、セリアの売上高に占める食品の割合が低いことです。2006年3月期には売上高の17%を占めていたお菓子の割合が、直近は1%にまで低下。お菓子の割合を減らす代わりに、自社商品の雑貨を増やすことで原価率を抑えているのです。

ふたつめの理由は、スケールメリットだと推測できます。ほか2社に比べて売上高は2倍以上です。商品を仕入れるにあたって、規模が大きいほど、値引きしてもらいやすくなるため、原価率を他社より抑えることができているのでしょう。

お菓子のほかにも商品ラインナップは三者三様です。

セリアは、手芸用品や、推し活グッズなどオリジナルの品揃えが豊富です。デザイン重視のため、わりと若者や女性に人気。キャンドゥは、イオン内に店舗があることもあってか、バランスのよいラインナップで幅広い消費者層に強く、ワッツは、タレントのコラボ商品や、オリジナルコスメなどが充実しています。

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