はじめに
資産運用は味方につけた方がいいものの、年金を原資にはしないほうがベター
年金を受給しなくても生活できるお金がすでにあり、上記の運用利率以上に必ず増やせる自信があるのであれば、60歳、65歳で受け取りを開始して、その年金を投資に回す手もあるかもしれません。
しかし、年金を受給しなくても生活できるようなお金がない場合は、この選択をしない方が良いでしょう。運用で失敗したら悲惨です。人生一度きり。60歳で繰り上げ受給して、運用で失敗した場合は、60歳時点で確定した年金額で死ぬまで生活しなければなりません。運用しながら取り崩すフェーズでも、常にマーケットにハラハラしながら日々過ごすことになるでしょう。「収益率の順序リスク(配列リスク)」にも注意が必要です。
今一度考えたいのは、年金の繰り下げで増える増額率は「確定」であることです。つまり、価格変動リスクがないということ。マーケットが変動しても、年金額が減ることはなく、生涯にわたって、リスク無しで受け取れるのは大きいのではないでしょうか。
年金は賦課方式といって、年金支給のために必要な財源を、その時々の保険料収入から用意するので、インフレにもある程度対応できる面もあります。そう考えると、年金を投資に回すのではなく、年金の繰り下げを選んだ方がベターだと考えています。
もちろん、「運用をするな」ということではありません。年金を原資にするのではなく、余裕資金で投資を行うことで、インフレに対抗しながら、年金の上乗せを作ることが期待できるでしょう。
みなさんの選択が正解か不正解かは寿命をまっとうしたときにしかわかりません。年金があくまでも「長生き保険」であることも踏まえて、皆様の納得のいく選択をしてもらえればと思います。