はじめに

遺言書は「家族の仲が悪い」「争う可能性が高い」など、将来の相続に不安がある方が検討されることが多くあります。しかし、家族の仲が良く、争う可能性が低くても、相続人の中に以下の3パターンに当てはまる人がいる場合は、遺言書を作っておくことで余計なトラブルを防ぐことができます。

・認知症の人がいる
・未成年がいる
・障がいのある人がいる


認知症の人がいる場合

日本では高齢化が進み、2023年で総人口に占める65歳以上の人口は約3,623万人で、29.1%となりました。「超高齢化社会」といわれ日本の高齢者人口の割合は、世界順位1位となっています。

平成29年度高齢者白書によると、2012年は認知症患者が約462万人、約7人に1人という割合だったところ、2025年には約5人に1人が認知症になるとの推計もあるとのこと。高齢化が進むことで加齢を原因とする認知症の人数も増加傾向にあり、他人事ではないということになります。

相続が発生した際、遺言書がなければ相続人全員で遺産を分ける話し合い(遺産分割協議)をして、それぞれが引き継ぐ財産を決めていかなければなりません。遺産分割協議をする大前提として、相続人が全員成人していて「判断能力がある」人たちでないと話し合いができません。判断能力とは、物事を正しく認識し、どんな責任を負うか理解・判断できる能力のことをいいます。

相続人の中に認知症を含む、判断能力がない人がいると、その人の代わりに遺産分割協議に参加する人を家庭裁判所に申し立てをして選任する必要があります。選任された人を「成年後見人」と呼び、判断能力のない人を「成年被後見人」と呼びます。成年後見人が遺産分割協議に参加して相続する財産を決めるのですが、相続人間で遺産分割協議をする場合と相違する点があります。

相続人間で遺産分割協議をする際は話し合いの中で財産を「何も引き継がない」とすることができます。ただし、成年後見人は「成年被後見人の財産を守る」ことを目的とするので、法定相続分は最低確保できるように話し合いに参加します。また、遺産分割協議をするために成年後見人を選任すると、その先、成年被後見人が亡くなるまでずっと成年後見人が成年被後見人の財産を管理することになります。遺産分割協議が終われば成年後見人の役目が終わるわけではありません。親族以外の専門家が成年後見人に選任されればその専門家に支払う報酬が発生します。それは成年被後見人が亡くなるまで継続します。

このことを避けるために、認知症等、判断能力のない人が相続人になることが想定される場合は遺言書を用意しておくとスムーズに相続の手続きが行われるようになるので、作成しておくことをお勧めします。

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