はじめに

ねんきん定期便の年金額の違い

まず、ねんきん定期便に記載されている「年金額」の見方について解説します。ねんきん定期便は、50歳未満か50歳以上かで様式が違い、記載されている年金額の計算方法も異なります。

・50歳未満のねんきん定期便
記載されている年金額は、「これまでの加入実績に応じた年金額」です。ねんきん定期便作成時点の年金加入実績に応じて計算した年金額なので、今後も保険料を納付することで、年金額は増えていきます。

・50歳以上のねんきん定期便
60歳未満の方は、現在の年金加入制度に60歳まで継続して加入したと仮定して、65歳から受け取れる年金見込額が記載されます。

ただし、記載されている年金見込額は、ねんきん定期便作成時点の収入額が60歳まで変わらない前提で計算されています。現在よりも収入が増えたり、60歳以降も厚生年金保険料を納めながら働いたりする場合は、年金額が増える可能性があります。

一方、60歳前に退職、収入額が減少する場合は、記載されている年金見込額よりも減る可能性があります。50歳未満の場合、記載されている年金額は途中経過のため、自分が老後に受け取れる年金額としてまだ実感を持ちにくいでしょう。50歳以上の場合は、記載されている年金額が実際の老後資金として現実味のある金額として捉えられるようになります。

自分が受け取る年金額を知ることが、老後資金に向き合うための第一歩です。記載されている年金額は年額です。12で割ってひと月分はいくらなのか、計算してみましょう。現在の生活費から老後の生活費を想定して、記載されている年金額で足りないようであれば、働き方や資産形成などによる対策を考える必要があります。

ねんきん定期便の年金額では不足

Aさん(56歳)は、年金定期便に記載されている年金見込額(161万円/ひと月当たり13.4万円 ※税・社会保険料控除前の金額)では老後の生活費として足りない、と気がついたことが相談のきっかけでした。

Aさんは65歳の定年退職までは現在の職場で働く予定です。退職後、70歳くらいまではペースダウンして仕事を続けることも検討しています。子どもの教育費が落ち着き、ようやく自分のために貯め始めた貯金はあるものの、今の貯蓄だけでは足りないと感じています。必要であればNISAを始めたい、との意向であり、資産形成対策も合わせて検討し、ライフプランを作成しました。

現状では、65歳で退職する場合、73歳でキャッシュアウトするシミュレーションとなります。70歳まで仕事を続けた場合(65歳退職時点の5割程度の収入額)でも、85歳でキャッシュアウトとなります。Aさん自身もお考えのように、必要な老後資金を準備するためには、NISA等を活用した資産形成が欠かせません。

Aさんは65歳までは厚生年金保険に加入して働く予定のため、税負担の軽減効果も得られるiDeCoの利用を提案しました。企業型確定拠出年金制度がない企業にお勤めであったため、定年退職までは掛金の拠出上限額である23,000円/月を拠出することになりました。iDeCoの利用だけでは目標とする老後資金には不足するため、さらにNISAを利用して積立金額を上乗せします。

NISAは当初2年間は月20万円を積立し、年間240万円のペースで投資します。つみたて投資枠(年間投資枠:120万円)で月10万円、成長投資枠(年間投資枠:240万円)で月10万円の積立を行うことを提案しました。投資額が一時的に大きく増えますが、資産形成の効率を上げるため、生活防衛資金を確保した上で、当面使う予定のない預貯金をiDeCoとNISAに移すプランニングとなっています。

2年が経過した後、60歳で年収が8割に下がるまでは、つみたて投資枠で月3万円の積立を継続することになりました。

つみたて投資枠、成長投資枠のいずれも3%/年で運用できたと想定した場合、90歳時点までキャッシュフローが赤字に転落することなく、希望の老後生活を送ることが可能となるシミュレーション結果となりました。

ライフプランで老後資金を見える化したことにより、自分の目標や進み方がわかり、漠然とした不安が安心へと変わりました、とAさんがお話されていました。資産運用に興味を持つようになったことがきっかけで、クレジットカードやポイントの活用も意識するようになったそうです。

日常生活においてもお金に対するアンテナが高まり、前向きに取り組んでいるAさんの姿が印象的でした。

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