はじめに
2024年末に発覚した中居正広氏の女性トラブルは、フジテレビ社員の関与が疑われる報道により、同社の信頼を揺るがす事態となりました。
疑問が残る記者会見でも株価が上昇した2つの理由
2025年1月17日に、その件に関してフジテレビの港浩一社長が、記者会見を開きました。会見では、同社社員の関与を否定し、第三者の弁護士を中心とする調査委員会を設置し、事実関係を調査することが発表されました。
ただ、事実関係や同様の事案がほかにもあるのではないかという質問については「今後の調査に委ねる」という曖昧な回答が目立った上、調査委員会についても、日本弁護士連合会のガイドラインに沿った第三者委員会になるか「現時点でわからない」と煮え切らない回答。調査の独立性や客観性にはかなり疑問が残ります。
また、これほど注目されているにもかかわらず、会見ではテレビカメラの撮影も認められず、出席者にも大幅な制限がかけられており、メディアとしての姿勢に疑問も浮かびます。
そんな不義理ともいえる記者会見でしたが、翌営業日20日の株価は、前営業日比+5.6%と大幅上昇。出来高も5倍以上増えています。なぜ株価は上昇したのでしょうか?
理由はふたつ考えられます。
まず一つ目は、「強い株主総会」への思惑です。もともとフジ・メディア・ホールディングス(フジHD)に第三者委員会の設置を求めたのは、米投資ファンドのダルトン・インベストメンツです。ダルトンは、フジHDの株を関連会社のファンドと合わせて7%超を保有する大株主で、フジHD側から具体的な対応がなければ「やむを得ず今年は株主総会で議案を提案する」と述べています。議案の内容は明かされていませんが、かなり強めの議案が提出されるでしょう。
そんな流れもあり、次回6月に開催される株主総会は、よくも悪くも日本中の関心が集まる大イベントになります。その株主総会のチケットを欲しいと考える個人投資家が買い向かったと考えられます。
二つ目は、フジHDの株価の割安さです。当社が保有する賃貸用のオフィスビルや商業施設や現預金などの資産額は、負債額に対して5000億円ほど超過する一方、足元の時価総額は4000億円強にとどまっており、当社のPBR(株価純資産倍率)は0.4倍です。これは、他の大手放送局平均の0.6倍を大きく下回っています。PBRが低い企業は、経営改善や資産売却が進めば評価が上がる可能性が高く、投資家から割安株として物色されます。次回株主総会で、そういった改革が進むと考える投資家が多いのでしょう。