はじめに
年度末にかけて円高の圧力が高まるか
トランプ政権の関税はグローバル経済への悪影響のみならず、米国自身のインフレ再燃というリスクも高めることになります。そしてそれは当然のようにFRBの金融政策の足かせになります。FRBのパウエル議長は2月11日、上院銀行委員会で証言し、「利下げを急ぐ理由が見当たらない」と明言しました。インフレの鈍化でさらなる進展を目にするまで政策金利を据え置く可能性が高いということです。パウエル議長はじめ政策当局者はトランプ大統領の経済政策がさらにはっきりするまで、金融政策の調整を待ちたいとの姿勢です。トランプ政権の政策に関する不透明さが米国の利下げをさらに遅らせるという構図になっています。
一方、日銀は前述の通り、1月の金融政策決定会合で利上げを行いましたが、その後もさらに利上げに前向きな姿勢を見せています。日銀の田村直樹審議委員は2月6日の講演で、物価の上振れリスクが膨らんでいるとして「新年度(2025年度)後半には少なくとも1%程度まで短期金利を引き上げておくことが必要だ」と述べ、今後も複数回にわたって利上げをするべきだという考えを示しました。
こうなると、米国の「利下げ停止=ドル高円安要因」と日本の「連続利上げ見通し=ドル安円高要因」の二つの要素が拮抗している構図が見て取れます。今後はこの綱引きにどのような力が加わるかで為替の動向が左右されます。足元は米国のCPI上振れでドル高に反転していますが、この流れが継続するかまだ不透明です。
一方、日本は春闘で賃上げの情勢が判明するころには再び日銀の利上げ観測が高まると思われます。まず、年度末にかけて円高の圧力が高まりそうです。
企業業績は堅調で、日経平均の予想EPS(一株当たり利益)は年度初め以来最高値まで上昇してきました。しかし株価はこの好業績を評価できずにPERは抑制されています。日銀の引き締め姿勢とそれを反映した国内金利の上昇のせいです。長期金利は約15年ぶりの水準まで上昇しています。一方、支えになるのは年度末を控えての権利配当取りの動きでしょう。特に2年目に入ったNISA(少額投資非課税制度)を通じた高配当銘柄への買いが株式相場の下支えになりそうです。
まとめるとトランプ政権の政策の不透明感が株式市場全体の重石となるなか、為替が円高に振れやすくなる悪材料を配当取りの動きで相殺し、年度末にかけても現状水準での一進一退の動きが続きそうです。
投資管理もマネーフォワード MEで完結!複数の証券口座から配当・ポートフォリオを瞬時に見える化[by MoneyForward HOME]