はじめに

今回より「お金のことば」と題した連載を担当します、フリーライターのもり・ひろしと申します。「新語ウォッチャー」を名乗り、言葉(新語・流行語が中心)をテーマにした執筆活動を行っております。この連載では、お金が関係する古今東西の言葉を取り上げていく予定です。どうぞ、よろしくお願いいたします。

さて初回のテーマは「流行語大賞に登場した『最高金額』ベストテン」です。

新語・流行語大賞といえば、去る12月1日に2017年の大賞が発表されたばかりですね。今年の大賞は「忖度(そんたく)」と「インスタ映え」の2語に決まりました。私見では今年の大賞は比較的に順当だったと感じていますが、皆さんはどう思われたでしょうか?

そんな新語・流行語大賞ですが、同賞の歴史に現れた言葉(ノミネート語を含む)の中には、面白いことに100円○○とか1000円○○といった形の「金額絡みの言葉」が登場します。試しに数えると、そのような言葉は11個もありました。

そこで今回は、新語・流行語大賞に登場した「金額絡みの言葉」を、金額が少ない言葉から多い言葉の順で、ランキング形式で紹介してみましょう。先に結論を言ってしまいますが、登場した言葉を眺めると「バブル崩壊後の日本経済の姿」が見えてきます。


第10位:1円○○/1円企業

まず第10位から。第10位には2つの言葉がランクインました。いずれも「1円」という低価格を表す言葉です。

ひとつめは「1円○○」(原文ママ)。東国原宮崎知事(当時)が「どげんかせんといかん」で新語・流行語大賞を受賞した2007年にノミネートされていた言葉です。この○○に入るのはパチンコや携帯といった言葉。当時1円パチンコ(1玉1円のレートで射幸性を低くしたパチンコのサービス)や1円携帯(端末価格を1円にする販売促進手法)が話題になっていたことを受けてのノミネートでした。

もうひとつは2003年のノミネート語である「1円企業」。2003年といえばテツ and トモの「なんでだろう~」などが大賞を受賞した年です。この1円企業とは「資本金が1円でも企業を設立できること」を意味します。実はそれまで会社を設立するためには、株式会社で1000万円、有限会社で300万円の資本金が必要でした。しかし特例法の施行により、資本金1円からの起業も可能になったのです。その後、会社法の施行(2006年)により1円企業は恒久的な制度となりました(なお同法により有限会社制度も廃止されている)。

第9位:65円バーガー

9位になると、2桁(10円台)の金額が登場します。65円バーガーです。小泉政権が誕生した2001年に話題になった言葉ですが、皆さんは覚えていらっしゃるでしょうか?

65円バーガーとは、当時、マクドナルドが展開していた「平日半額キャンペーン」で販売していたハンバーガーを指します。ちなみに当時、マクドナルドではハンバーガーの定価を130円としていました。

マクドナルドによるこのキャンペーンは大ヒット。同社は当時「デフレの勝ち組」とも呼ばれました。しかしマクドナルドは2002年にキャンペーンを打ち切ってしまいます。その際、定価130円を80円に「値下げ」したのですが、半額の65円から見ると実質的な「値上げ」に見えてしまいました。その結果、客離れが起こってしまい、マクドナルドのブランドイメージが一時失墜したのです。

8位:150円台

ここからは3桁(100円台)の金額が続きます。

まず第8位は「150円台」という言葉でした。1986年の新語・流行語大賞において「流行語部門・特別賞」を受賞した言葉です(注:当時の新語・流行語大賞は部門別に受賞語を決定していた)。ちなみに1986年といえば、バブル経済の最初期にあたる時代です。

この150円台とは、当時のドル円相場のことを指します。1985年のプラザ合意を背景に為替相場では急激な円高が進行。1985年当時で1ドル260円程度だった相場が、1986年初頭には200円割れの水準まで達することに。そんななか東海銀行(のちの東京三菱UFJ銀行)が「1ドル150円台」という大胆な予測を立て、この言葉が注目されたのです。実際この予測は、その年のうちに的中することになりました。2017年の現在からすると、ずいぶん隔世の感がある相場感覚です。

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