はじめに
先日、とあるマネー雑誌で、街歩きしながらお宝銘柄を探すというわたしの投資方法が紹介されました。実際に、原宿あたりを散策しながら、銘柄をピックアップする体験型の記事で、日頃から目をつけていたいくつかのお店を紹介しました。
そのひとつが、オニツカタイガーです。表参道から1本中に入った通りの1角に4店舗が固まって配置されており、いつ行っても外国人客でいっぱいです。
オニツカタイガーは、アシックス(7936)が展開するブランドですが、ここ数年で急速にファンを増やしています。その効果もあって業績は絶好調、株価はここ2年で5倍近く上昇しています。時価総額は2兆円を超えており、日本株の中でも超優良な大型株といえます。
今さらわたしひとりが当社の素晴らしさをアピールしたところで、たいした影響もないのですが、なんと、その記事をみた当社のIR担当者から「ぜひお礼が言いたい!」と連絡があったのです。しかもインスタを通じて(時代ですね)。これにはかなり驚きました。
当社は、かなり個人投資家を大切にしています。通常、時価総額が一兆円を超える規模になると、当然、機関投資家が好んで投資しますので、個人投資家に好かれずとも、痛くも痒くもないように思います。いったいなぜ、個人投資家に矢印を向けているのでしょう?
アシックスの株価が2年で5倍になった理由
あらためてアシックスが絶好調な理由を確認します。
2025年2月14日に発表された2024年12月期の決算は、売上高6,785億円(前年比+18.9%)、営業利益1,001億円(前年比+84.7%)と、初の営業利益1,000億円を達成しています。粗利益率は、55.8%で前年から3.8%の改善、営業利益率は14.8%で5.3%の改善と、企業努力による効率化と、販管費のコントロールが成功していることがわかります。
地域別の業績は、日本、北米、欧州、中華圏、東南・南アジアの5つに分けて発表されていますが、すべての地域で、二桁以上の成長率を達成。営業利益率においても、すべての地域で改善されており、とくに日本市場は23.5%と前年比+12.7ポイントと急上昇しています。この理由としては、国内での不採算ビジネスを撤退・縮小し、直営店やECなどに注力する「選択と集中」を行ったことが功を奏しています。
中華圏での伸びも大きく、売上高は1,004億円と前年比で+29.5%。営業利益率も前年から5ポイントアップの19.3%となっています。中国でもオニツカタイガーがファッションアイコンとして人気とのこと。中国での販売不振に苦しむ日本企業が多い中、当社に限ってはどこ吹く風となっています。
カテゴリー別でみると、やはりオニツカタイガーの成長が目立ちます。売上高は954億円と前年から58.3%増収で、全体の売上比率は14%、前年の10.6%からかなり存在感を高めています。オリツカタイガーは利益率が34%と非常に高いため、アシックス全体の成長ドライバーになっています。
このようにアシックスは、不採算事業を整理し、高利益率カテゴリへの集中を行うことで、売上重視から利益重視へと大転換しました。営業利益はこの2年で2.5倍に伸びており、営業利益率は7.9%から14.8%へと倍近くに改善。利益の伸びが、株価上昇を導いたことは間違いありません。
さらには、積極的な株主還元も行っています。2024年は自社株買い350億円分を2回実施し、さらに2025年に向けて最大200億円・700万株の自社株買いと2,500万株の償却を決定。そこに、円安によるインバウンド需要と、世界的なスポーツ需要が相まって、必然的に株価が上昇したのです。