はじめに
ポイントで楽天を包囲するヤフー
ソフトバンクユーザーであればポイントが優遇されて、どんどんTポイントが貯まる。そしてそのポイントがYahoo!ショッピングだけでなくヤフオクでも使える。期間限定ポイント以外はファミリーマートなどのTポイント加盟店でも利用できます。
ソフトバンクとヤフーが連携し、携帯電話とクレジットカードを軸にヤフーグループ全体のポイント経済圏でユーザーを囲い込んだ結果、楽天の顧客がヤフー経済圏に流出する現象が起きてしまいました。
楽天もスーパーポイントアップという仕組みを導入し、楽天モバイルの利用者はポイント優遇というやり方で対抗するわけですが、残念ながらその手法は十分とはいえませんでした。
2017年11月、楽天モバイルは格安スマホ市場6位のフリーテルを買収、合計加入回線数約120万人となり同市場の3位に浮上しました。
一方でソフトバンク・ワイモバイル連合の加入者数は3,900万人。所詮、格安スマホ同士で買収を続けてもソフトバンクと戦える規模には追いつけないのです。
楽天の決断は「自前の携帯電話会社」
そして今後、さらにスマホ利用が「動画視聴」にシフトすることを考えると、これからスマホでたくさんのお金を使ってくれるユーザー、言い換えるとEC市場でもお金を使ってくれるユーザーでもあるのですが、こうした人たちが格安スマホを離れ、大手3キャリアを使う流れにもう一度戻ることになるでしょう。
そして格安スマホは高齢者を中心とした「あまりスマホを使わない層」という、ビジネス的に考えるとあまりありがたくない消費者中心の市場として、大手とはセグメントを棲み分ける構造に集約されていきそうです。
その流れがはっきりするまで待っていては、楽天市場はジリ貧になってしまう。それが今回、楽天が携帯電話事業に本格参入することを決めた最大の理由でしょう。
しかし、携帯電話事業への参入には莫大な資金が必要です。イー・アクセスが市場参入した当時は、全国ネットワークを構築するために2兆円が必要になると言われていました。
楽天は回線の一部は今後も他社から借りることにして、インフラ投資は6,000億円程度に抑えたい意向です。都市部だけ自前の高速インフラを作り、郊外や地方では格安スマホのインフラを使うといったハイブリッド方式をイメージしているのでしょう。
それでも今回の動きは楽天という企業にとってみれば一大ギャンブルに出たようなもの。この勝負に勝てるかどうか。楽天の未来に注目したいと思います。
写真:ロイター/アフロ