はじめに
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回の相談者は、30歳でがんになってしまった女性。ライフプランが大きく変わる中、お金の使い方に悩まれているようです。FPの黒田尚子氏がお答えします。
30歳でがんにかかりました。ライフプランを大幅変更しなければならずお金の使い方に迷っています。 治療の最中ですが、再発リスクもあるため40~50歳で人生を終えると想定しています。がんの治療費は月10万円程と高額で負担が大きく、 手術や抗がん剤治療が終われば出費にも区切りがつくはずですが、病状を見て進めていくため、先の見通しが立ちません。
一方で、結婚や出産を諦めることになったので「自分のためにお金を使おう」と思い、また、高額な治療費で金銭感覚が麻痺してしまったのか、節約どころか、がんと診断される前は見向きもしなかったブランド品やコース料理への出費がかさんでいます。
以前は節約志向で、毎月3~5万円程度を貯め、30万円程貯蓄したタイミングやボーナスで投資信託の買付をして資産を築いてきましたが、ここ数ヶ月は赤字続きです。
人生を終える頃に貯金も使い切るのが理想ですが、節約志向に立て戻すべきなのか、もしくはある程度貯金を切り崩して使っていってもよいのか、お金の使い方に迷っています。
【相談者プロフィール】
・女性:30歳(会社員) 、未婚
・お住まい:賃貸
・毎月の世帯の手取り金額:30万円
・年間の世帯の手取りボーナス額:85万円
・その他の収入:140万円
・毎月の世帯の支出の目安:44万円 ※赤字
【毎月の支出の内訳】
・住居費:15万円
・食費:4万円
・水道光熱費: 1万円
・教育費:1万円
・保険料:0円
・通信費:1万円
・車両費: 0円
・お小遣い:5万円
・その他支出:治療費10万円、日用品3万円、交際費3万円、交通費1万円
【資産状況】
・毎月の貯蓄額: 0円
・ボーナスからの年間貯蓄額:50万円
・現在の貯金総額:100万円
・毎月の投資総額:0円
・現在の投資総額:1,300万円
・現在の負債総額:0円
“ 30歳でがんと診断され、治療が続いています。再発リスクも考えると、40~50歳で人生を終えることになるかもしれません。”
“かつては節約・貯蓄が好きだった私ですが、ブランド品や高級料理にお金を使うようになり、金銭感覚も変わってしまいました。”
“これから私は、どうお金と付き合っていけばいいでしょうか?”
とても率直で、そして切実なご相談ですね。同時に、がん患者さんに限らず、「限りある時間をどう生きるか」「限りあるお金をどう使うか」に向き合う、すべての人に通じるテーマでもあると思います。
がんに罹患した後の余命はわからない
まず、相談者さんにお伝えしたいのは、がんに罹患したといえども、正確な余命はわからないということです。どのようながんで、ステージがどれくらいかなどの情報がないため、生存率は確かではありませんが、私自身、乳がんの告知を受けたとき、担当医から5年相対生存率50%と告げられました。でも、これはまで統計上の数字であり、個々人の予後を断定するものではありません。私の場合も、その数字を聞いた当時は不安でしたが、15年以上経過した今でも変わりなく元気に働いています。
もちろん、私よりも進行度が低い患者さんの中には、すでに“旅立たれた”方や再発・転移をして、辛い治療を続けておられる方もいます。
ただ、医療は日々進歩しているのです。どんなに最新のデータでも数年前のもの。生存率は確実に向上しており、がんになっても、生きることや人生を愉しむことを自分からあきらめる必要はありません。