はじめに
現金と運用資産の割合を決める「120の法則」
お金がいくらあるからといっても、そのほとんどすべてを投資に回してしまうのはNGです。そんなことをしてしまえば、値動きに一喜一憂することになってしまいます。落ち着いて投資できる資産の範囲を決めて投資することが大切です。
投資やビジネスの世界では「Cash is King」と呼ばれています。現金を一定比率持つことが安心につながるというわけです。
あくまでひとつの目安ですが、無リスク資産(現預金・個人向け国債)とリスク資産(株・投資信託・金など値動きのある資産)の割合は、「自分の年齢」と「120から自分の年齢を引いた数字」を対応させる「120の法則」がおすすめです。
無リスク資産とリスク資産の配分「120の法則」
画像:著書「臆病な人のための リスクが少ないお金の増やし方」(ぱる出版)より
たとえば、自分の年齢が30歳であれば、無リスク資産とリスク資産の割合は「30:90」にします。資産が500万円あるなら、無リスク資産は125万円、リスク資産は375万円となります。ただし、総資産が少ない場合は投資よりも貯蓄を優先しましょう。生活費6か月分を無リスク資産で確保するのが大切です。
臆病者におすすめの資産配分戦略①「カウチポテトポートフォリオ」
現金と株を50%ずつ保有する資産配分のことを「カウチポテトポートフォリオ」といいます。カウチポテトとは、カウチ(couch:寝椅子)に寝転びながらポテトチップスを食べることを指す言葉です。カウチポテトポートフォリオは、そのくらい気楽にしていても資産を増やせる資産配分として知られています。
カウチポテトポートフォリオ
画像:著書「臆病な人のための リスクが少ないお金の増やし方」(ぱる出版)より
資産を100%株で保有した場合と、カウチポテトポートフォリオで現金と株を50%ずつ保有した場合で比べてみましょう。あるとき株が暴落して半額になってしまったとすると、株100%の場合は資産も半額の50%に減ってしまいます。しかし、現金と株を50%ずつ保有している場合は、株は半分の25%に減りますが、現金は減らずに残っているので、資産の合計は75%。つまり資産は25%しか減らずに済んだというわけです。
カウチポテトポートフォリオを実践すれば、仮に暴落が起きてリスク資産が値下がりしても、現金を確保しているので暴落の影響を減らせます。
臆病者におすすめの資産配分戦略②「パーマネントポートフォリオ」
保有し続けているだけで資産を堅実に増やしていくことを目指す資産配分の考え方が「パーマネントポートフォリオ」です。「パーマネント」とは「半永久的な、長持ちする」といった意味。
パーマネントポートフォリオは、米国の経済評論家、ハリー・ブラウン氏によって開発されました。ブラウン氏は、資産を現金、米国株、米国債、金(ゴールド)の4つの資産に25%ずつ、均等に投資することを考えました。
パーマネントポートフォリオ
画像:著書「臆病な人のための リスクが少ないお金の増やし方」(ぱる出版)より
これら4つの資産は、市場の動向に合わせて異なる値動きをします。ある資産が値下がりしても、他の資産が値下がりしない、あるいは値上がりするといった具合に補い合いながら、資産を増やせるというわけです。
具体的には、
・現金…景気後退に備えて保有します。市場が暴落しても、現金の価値はあまり変わりません。また、他の資産が値下がりしたときに買い増すのにも使えます。
・米国株…株価は景気がいいときに上昇します。その恩恵を受けるために保有します。歴史的に見ても、株は経済成長に合わせて大きなリターンを上げてきました。
・米国債…国債は景気が悪く、金利が下がるときに値上がりします。株と反対の値動きをする点でも、株と一緒に保有する意味のある資産です。
・金(ゴールド)…金は自身に価値のある実物資産。インフレになると値上がりするため保有します。「有事の金」といって、世情不安が不安定なときにも値上がりします。
ただこれらは、米国の専門家が米国人向けに考えた資産配分ですので、日本人が保有するなら現金は「円」、金は円ベースでOKです。
株に関しては日本株100%、米国株100%とするよりも、世界株がおすすめです。昔から、異なる資産を組み合わせることで「同じリターンでリスクがもっとも小さい」「同じリスクでもっともリターンが高い」資産配分が研究されてきました。その結論は「市場全体に投資することがもっとも効率的だ」というところに行き着いています。
近年は世界の分断が進んでいます。「日本(米国)だから安心」といえる時代ではありません。どの国が今後どうなるかがわからない以上、世界株に分散投資しておいたほうが負けにくいという意味でベターです。世界株に投資する投資信託(インデックスファンド)に投資すれば、1本で世界株の平均点を狙った投資ができます。
ところで、ハリー・ブラウン氏のポートフォリオは現金比率が25%と少なくなっています。現金比率は「120の法則」や「カウチポテトポートフォリオ」で考える方がよいでしょう。
よって、筆者が考えるパーマネントポートフォリオは、無リスク資産とリスク資産にわけ、その比率は「50:50」もしくは「自分の年齢:120−自分の年齢」を採用。
無リスク資産には個人向け国債も含めてOK。円金利上昇の恩恵を受けるなら「変動10年国債」がベターです。リスク資産は、「世界株」「米国債」「金」の3つの資産に均等配分します。米国債を残した理由は債券としてもっとも安全で流動性が高く、取引量が世界一。
それでいて金利も高いためです。
日本人向けのパーマネントポートフォリオ
画像:著書「臆病な人のための リスクが少ないお金の増やし方」(ぱる出版)より