はじめに

「金髪の娘」が「適温」になった由来

さてここまでゴルディロックスの意味が「ほどよさ・適温」であることを説明しました。

しかしゴルディロックスの「おおもと」の意味は、「ほどよさ・適温」などではありません。再び研究社・新英和中辞典のgoldilocksの項目を参照すると、最初の意味として次の説明が登場するのです。

「金髪の(きれいな)人、金髪娘」。goldilocksのうちgoldiの方が金(gold)、locksが髪を意味するため「金髪の人(娘)」となるわけです。なお辞書の説明には登場しませんが、この言葉は「おてんば」のニュアンスも含んでいるようです。

ではどうして「金髪の娘」が「ほどよさ・適温」を意味するのでしょうか?

その謎は、英国に古くから伝わる童話『Goldilocks and the Three Bears(ゴルディロックスと三匹の熊)』に隠されています。日本では『3びきのくま』というタイトルで知られる童話です。もともと英国の民間伝承であった物語を、1837年に詩人のロバート・サウジー(1774-1843)が再話。さらに『戦争と平和』などの作品で知られるロシアの作家レフ・トルストイ(1828-1910)が再話を行ったことでも知られます。日本でも絵本に登場する定番のストーリーとして、この題名を知っている人もいることでしょう。

その物語の冒頭に「金髪の娘」と「ほどよさ・適温」を結びつけるエピソードが登場するのです。物語の主人公は、金髪の女の子と、大・中・小の熊たち(物語によっては熊のパパ、ママ、子どもの家族とされることもある)。森の奥にある熊たちの家が、物語の舞台です。

ほどよい温度の「おかゆ」

「三匹の熊は、ある朝、朝食のおかゆを作りました。そのおかゆが熱かったので、おかゆが冷めるまでしばらく散歩することにしました。その留守中の熊の家の前を、お腹をすかせた金髪の女の子が偶然通りかかかったのです。つい家の中に入ってしまった女の子は、テーブルの上におかゆの入った3つの皿が置いてあるのを見つけました。そこで女の子はそのおかゆを、口につけてしまったのです。大きなお皿のおかゆは、とても熱くて食べられません。中ぐらいのお皿のおかゆも、まだ熱くて食べられませんでした。しかし最後に口にした小さなお皿のおかゆは『ほどよい』温度だったのです。女の子は、その丁度いいおかゆを全部食べてしまいました」

そう。童話の中で、金髪の女の子がほどよい温度のスープを飲んでしまったことこそが、ゴルディロックス=ほどよさ・適温という連想の元ネタであったわけです。これが巡り巡って「経済や相場の適温状態」を意味するようになったんですね。

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