はじめに
物語の続き
さて筆者は冒頭「ゴルディロックス相場の行く末を、言葉の観点で予想してみる」と書きました。というのも「三匹の熊」の続きに、相場の行く末を想像させる展開が待ち受けているのです。
「おなかが一杯になった女の子は、近くの椅子に座ろうとしました。皿と同じように椅子も3つあります。一番小さい椅子が丁度良かったので座ってみると椅子が壊れてしまいました。眠くなった女の子はベッドで眠ろうとしました。皿や椅子と同じようにベッドも3つあります。このうち一番小さいベッドが丁度良かったので、女の子はそこで眠ってしまいました。そうこうしているうちに三匹の熊が家に戻ることに。家の中を荒らされていることを知った熊たちが家の中をおそるおそる見回っていると、寝室で女の子と鉢合わせ。女の子はあわてて逃げ出してしまいました」
この物語、どうみても女の子が加害者で、大・中・小の三匹の熊は被害者ですよね。トルストイは当時のロシアの子供の行儀の悪さを、物語のなかで諌めるつもりだったのかもしれません。
ともあれここで筆者が注目したいのは「女の子によって心地よい時間は長く続かなかった」ということです。あくまで筆者の個人的な見方ですが、経済的文脈でゴルディロックスという言葉を使う人は、相場の「継続可能性」を心配しているがゆえに、ゴルディロックスという言葉をわざわざ選択しているように思えてなりません。
相場と熊
相場の用語のひとつに「ベア相場」という言葉があります。弱気相場(下落傾向にある相場)を意味する言葉です。このベアとは、bear、すなわち熊のこと。熊が前足を振り下ろす様子が語源との説もあるそうです。
ベア相場の熊はゴルディロックスの熊と直接関係ありません。ただ適温相場と弱気相場の双方に、熊が潜んでいることは興味深く思えます。「ゴルディロックス相場のそう遠くない未来にやってくるベア相場を」つい想像してしまう筆者は、心配性が過ぎるかもしれません。